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〔続 スイス悠々 秋色編〕(4)ピラトゥス山~リギ山:大周遊 

ピラトゥス山頂[P]へ向かう小型ゴンドラは、高低差は小さいが優美な環境(左)。後方にルツェルン[L]、側方(北側)にリギ山[R]を遠望(中)。正面に異様な岩山の山頂[P]、乗り継ぐ大型ゴンドラ[D]が見えた(右)

 2017年シーズン、従来はトラベルパスで半額であったピラトゥス山がパスの適用区間になっているとの情報を得た。つまり、追加料金なしで訪れることが出来るとあって、旅程に組み入れた。
 初体験となるピラトゥス山頂には二つのルートがある。
 一つは、基地となるルツェルンから路線バス(バリアフリーの低床型トロリーバス)で北側に移動し、小型ゴンドラと大型を乗り継いで山頂に上がるコース。一方、ルツェルンから近郊電車で東南部に移動し、ピラトゥス山塊の南側湖畔駅から、世界一急峻な勾配で著名なPilatus Bahnピラトゥス登山鉄道で登るコース。“急峻な環境は下る景色が楽しい”との自身の好みで北側からの周遊コースとした。
 スイス政府観光局の情報では、ルツェルンを起点としたピラトゥス山の周遊コースは、《ゴールデンルート》と紹介されている。一方、湖水・船が好きな小生は、さらにアレンジを加えた。ピラトゥス登山鉄道で降りた湖畔駅から至近の桟橋で観光船に乗り、観光船を乗り継いで、夕刻のリギ山も合わせて訪ねる大周遊コースで、名付けて《スーパー・ゴールデンルート》!
 さぁ、アナタもご一緒しましょう。スイス連邦鉄道SBBの時刻表をフル活用します。
 宿泊地Spiezシュピーツから目的地をPilatus Kulmピラトゥス山頂とし、自身の思い描くルートを探し出しましょう。

ドラゴン伝説の急峻なピラトゥス山に登る大型ゴンドラは愛称“DRAGON”:行き交い撮影(左)。山頂からはベルナーオーバーラントの山脈を遠望(中上)。三山を望遠撮影:正面アイガー[E]、左後方にメンヒ[M]、右・南西にユングフラウ[J](中下)。北側はルツェルン湖とリギ山[R](右)

 初体験地を訪れる際は、分かり易い起点駅・乗換駅を経由することが基本です。
 SBBスイス連邦鉄道ホームページ(以下SBB)の単純な検索では、Luzernルツェルン手前のInterReigio(IR;邦訳がないが、謂わば“地域間準特急”)停車駅から路線バスがヒットすることがあり、困惑しました。一旦、ルツェルンを目的地に設定し、二重の検索をすることもあります。催行決定日は、ゴンドラの麓駅Kriens PBを経由地として、狙い通りのルートが、幸いにもヒットしました。
 朝食を摂った後、シュピーツ駅7:25発のInterCity(IC 特急)でベルンへ。ルツェルン行のIRに乗り換えます。同駅前からバリアフリーの低床トロリーバスに乗り、Kriens 地区にあるピラトゥス中央駅の名称と理解できるKriens, Zentrum Pilatusバス駅で下車します。SBB情報では所要11分です。バス駅界隈の様子をGoogle map 等で事前に確認しておくことも定番です。幸い、東西に延びる道路に面したバス駅の南隣のやや高台にランドマークとなる教会があります。
 また、バスを降りた後、Kriens PBまで徒歩11分との情報も得ます。ハイキングで頻用するkomootやGoogle mapで散策路の確認もしておきます。はい。初めての地を歩く際には定番の路程シミュレーションです。(以上は今や、スマホの活用で便利な時代になりましたが、小生は未だ不使用です。)
 Kriens PBが近づく頃、小型ゴンドラが次々と行き交う様を見て、期待感が高まります。窓口でトラベルパスを見せて、専用のカードを受け取ります。改札口で二次元バーコードを読み取らせ、青ランプが点灯したら体でバーを押し、さぁ入場です。
 閑散としていたので、相棒・ヒロさんが4人乗りのゴンドラに一人で、小生も一人で乗りました。所要30分の小型ゴンドラは、中間駅で徐行・近接しワイヤー交換があります。記念に撮り合いました。
 高低差の小さい丘陵地との表記が出来る秋色満載の秀逸な環境の中を静かに、ゆっくりと小型ゴンドラが進みます。眼下では放牧中の牛さんたちとの出会いもあり、目を上げれば過ぎ去る後方に住宅地と分るKriens地区、通称ルツェルン湖と同市街方向の遠望。湖の北側にはリギ山も眺めつつ優雅です。
 小型ゴンドラの終着Fräkmünteggで大型ロープウェイ“DRAGON”に乗り換えます。景観が一変し、急峻な岩山を、所要4分、高速で山頂へ。小型ゴンドラと異なり、一気に急峻な崖を登りつめます。
 初体験のピラトゥス山頂駅界隈からの景観は秀逸でした。幸い、視界に恵まれ、ベルナーオーバーラントの山脈を眺めることが出来ました。肉眼でも、アイガーは分かります。北東方向からの眺めになるので、アイガー、メンヒ、ユングフラウの三山の並びが異なり、同定に若干の戸惑いを感じました。
 望遠撮影すると、素人撮影ですが、自己評価で及第点のある三山が撮れました。アイガーの左後方・南東側にメンヒ、右にユングフラウの各々特徴的な山容が記録に残せました。
 一方、4000mを超える他の山々は、形状と位置が異なり、同定には慎重になりました。

世界最大の急勾配で知られるピラトゥス登山鉄道を望遠撮影(左)。通常撮影(左中)。下りは登山電車の最前列に立ち続けての撮影(右中)。下るより“落ちる”が似つかわしい急勾配をラックレイルでガタゴトと(右)

 ピラトゥス山頂は、岩山が連なる形状です。至近の岩山に登り、360度の景観を体験しましょう。
 ピラトゥス山頂の岩山からは眼下のルツェルン湖、左手・北東側の湾にルツェルンの街、正面方向にリギ山など東側景観を眺めることができます。土になっている足元には水溜りが・・・。かなりの降雨があったのでしょうが、幸い、訪れた際は快晴でした。がしかし、ルツェルン湖から雲が沸き上がり、北側のゴンドラで上がってきた界隈を覆いつくしてしまいました。結果論ですが、朝食後の速やかな移動でゴンドラからの優美な景色を堪能できました。“山は朝が良い”ことを改めて体感した次第です。
 岩山から降りて、山頂ホテル前の展望台からピラトゥス登山鉄道の軌道と電車に気づき、望遠撮影を繰り返しました。世界一の最大傾斜角49%(490‰)の急勾配であり、連結しての上り下りが危険であるためと分かりますが、電車は一両のみで、ただし、上り下りの電車が3・4両連続して到着・出発する様子を確認し、撮影しました。
 時間をみて、下り電車に乗ります。小生のこだわりですが、“落ちる際は、下側に立つ”のが基本です。幸い、乗車を待つ観光客の先頭グループに位置し、乗り場までの階段を降りて行くと、次々と、座席を求めて観光客が乗車します。小生はわき目もふらずに、石段を下りて、崖下に停車中の電車の先頭、運転台横を、かつ、路線を地図で確認済の、落ちて行く方向の左側を狙い通りに確保し、立ちました。即ち、落ち始める当初は急斜面の山側ですが、間もなくから湖を眺めつつの景観を楽しめるからです。

待避線での光景は圧巻!急勾配なので、連結なし。4両が貯まった時点で線路が繋がり、次々と落ちて行く

 下手な文章解説よりは、百聞は一見に如かずで、現地で体験するのが一番ですが、せめて、撮った写真で様子をご賢察いただければ幸いです。
 急峻な路線を、無事湖岸駅まで落ちたら、至近地にある桟橋に移動します。初めての地ですが、事前に地図で界隈を承知していましたし、案内看板もあります。
 桟橋に着くと、観光船がこちらに向かって来るのに気づきました。その様子を眺め、撮りつつ、かつ、後続の登山電車が急斜面を緩速で降りつつある様子にも気づき、撮影しながらのひと時でした。
 観光船は、これまた恒例で、後甲板に居座ります。幸い、観光客が閑散とした状態での出航でした。船尾の景色と、ピラトゥス側・湖岸に近い側の船腹左側に目を留めつつの船旅です。
 ルツェルン湖の観光船を初体験したのは2015年初夏で、その様子は《スイス悠々(2)リギ山とルツェルン湖》でご紹介しました(本会報No.420:2015年11月号p.69-74)。
 今回は、初めての秋の船旅で、夏季とは異なる色合を求めてリギ山に向かいます。かつ、乗船場所が初めての地で、観光船を乗り継いで、リギ山登山鉄道“赤い電車”の湖畔駅であるVitznauフィッツナウに移動するのも初体験でした。湖・海と船への関心が高い小生にとって、乗船自体が楽しみ・喜びです。船旅やリギ登山鉄道はトラベルパルの適用区間なので、余分な支出もなく、気軽でもあり、お勧めです。えぇ、湖の航行なので、揺れることもなく、船酔いの懸念もありません。

夕暮れのリギ山で眺めるベルナーオーバーラントの山脈とピラトゥス(左上)。望遠撮影で名山を確認:アイガー[E]、メンヒ[M]、シュレックホルン[S]と、最高峰のフィンスターアールホルン[F](左下)。ズームをかけて三山を撮影:アイガーの向こうにユングフラウ[J](中)。ピラトゥス山[P]は逆光(右)

 《スイス悠々(2)リギ山とルツェルン湖》でご紹介した様子と異なったのは、ベルナーオーバーラントの山脈が(2016年7月下旬に妻を伴って訪れているので、3度目にして初めて)撮れたことと、登山電車車窓からの秋色でした。
 ベルナーオーバーラントの山脈は、ピラトゥス山頂からの景色と比べて、遠距離となり角度も異なります。同定に戸惑いがありましたが、他の名山を含めて、案内看板と比較し、確認しました。
 夕刻なので、西側に位置するピラトゥス山は逆光になります。
 リギ登山鉄道の下りは、夕刻の順光の効果も奏功し、美しい限りでした。えぇ、定番で、降りて行く景色を撮るため、最前列の湖岸側の“立ち見”席を確保しての乗車でした。
 好天に恵まれ、静かな夕暮れ時に、フィッツナウに降りて、ルツェルンン行の観光船に乗りましたが、夕景の光に魅せられつつのひと時でした。逆光となるピラトゥス山方向、順光となる湖岸方向の輝く光など、秀逸な景観に見入り、幸せを体感しつつ・・・。

二つあるリギ登山鉄道の“赤い電車”は湖を眺める路線で、小生のお勧めです。登る電車を待機(左)。秋色に魅せられつつの車窓、湖畔の終着駅フィッツナウ[Fz]が見えて来た(左中)。観光船に乗り換え、ルツェルンへ:ピラトゥス山[P]の夕景(右中)。ルツェルンに近づく頃にリギ山頂[R]が見えてくる(右)

 滞在期間中、明日は本拠地であるベルナーオーバーラント地方が全日快晴に恵まれる日です。今回の本拠地はシュピーツで、電車でインターラーケンに出て、BOBことベルナーオーバーラント鉄道に乗り換え、いわばスイスでの“わが故郷”的なメンリッヘンに上がりましょう。初秋は初体験です。

 備忘録として、この日の周遊コースを地図に記録しておきます。アナタの催行時に、ご参照を!
 グーグル地図を基に、自身が撮影した写真を入れました。 

※ 本稿は鳥取県東部医師会報 随筆欄に掲載・連載(レイアウトは異なります)

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