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1-Matterhorn

〔スイス悠々〕(1)マッターホルンを仰ぎ見つつ

 

 恵まれて、念願であったスイスを巡る旅が今年6月下旬に実現した。
 発端は10年前に、結婚30年を記念し、ドイツ・スイスを格安のモニターツアーで巡った際、2005年6月1日夕刻にインターラーケンに着き、インターラーケン・オスト(東)駅至近のホテルに2連泊したことにある。翌2日は全日自由で、3日はツアーでユングフラウヨッホに上がり、夕刻にバスでチューリヒに行き、大韓航空で関空に戻る企画だった。
 全日自由の日は、まず至近に裾野駅があるケーブルカーで、急峻な崖をハーダークルムに上がり、アイガー・メンヒ・ユングフラウのベルナーオーバーラント三山を遠望した。次いで、オスト駅から一駅移動し、狭軌の登山鉄道シーニゲプラッテバーン(Schynige Platte Bahn ; SPB)に乗り換えて、ベルナーオーバーラント三山の眺望に優れ、高山植物園も有名なシーニゲプラッテ♪へ。植物園はシーズン前(開園前)だったが、幸いこの年の西欧は30℃を超す好天が続き、スイスでも高山植物の開花が早まっていた。つまり、開園前で観光客が希少な環境の中、三山などを眺めながら高山植物をゆっくりと楽しめた。山上駅に近いホテルのテラス席で三山を眺めながらの昼食も良き思い出・・・。
[♪:昨今、日本の旅行業者がハイキング、トレッキングを含むツアー企画を発売しており、シーニゲプラッテも組み込まれているが、当時は知名度が低かった。]
 旅程最終日も快晴に恵まれた。ツアーバスでラウターブルンネンに移動し、下車すると青空に映える真っ白なドレスをまとったシルバーホルン(Silberhorn 3695m)に魅せられた。ヴェンゲルンアルプ鉄道(Wengernalpbahn; WAB)で急坂を登り、途中駅のヴェンゲルナルプ(Wengernalp 1873m)に停車した時間が長かったが、車窓から間近に聳え立つ(高低差約2200m)のユングフラウ、シルバーホルンと氷河を眺め続けた印象はとても強い。クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg 2021m)でユングフラウ鉄道(Jungfraubahn, JB)に乗換え、ユングフラウヨッホへ電車で登り、スフィンクス展望台(Sphinx 3571m)での360度の展望も、空気が澄んだ快晴で、景観が今でも目に焼き付いている。

グリンデルワルト(1034m)の自室から正面に見える3970mの朝日を浴びたアイガー(2015/6/30 6:09撮影;左)。始発06:49の電車が発って3分余でアイガー西の稜線から白く美しいシルバーホルンが見え(6:53;左中)、ユングフラウも顔を出した後に、谷を進むと崖の上にアイガー頂上のほぼ正面を仰ぎ見る(6:55;中右)。インターラーケン(568m)では、車窓からユングフラウ(4158m)とシルバーホルンがくっきりと!(7:29;右)

 ベルナーオーバーラントを再訪し、グリンデルワルトに連泊して、ハイキング、トレッキングすることは、夫婦共通の念願となっていた。
 しかし、妻は娘が近居していることもあり、孫の世話で動けない。一方、小生のもう一つの夢、それはスイスパスを用いて自由にスイスを巡る旅であったが、夫婦で行くスイス自由旅の下見として、かつ、自身の65歳になる記念に出かけることにした。看護部が“Work Life Balance (WLB)”を推進しているが、自身、当直を毎月7回(宿直6~7回)こなしている現状もあり、自身を労う意味合いもあった。
 さて、スイスパスを活用する上で欠かせないのが、極めて優れたスイス国鉄のHP(www.sbb.ch/en)で、あらゆる乗り物のダイヤ、乗り換えホーム等がきめ細かく得られる。妻は関心を示さないが、自身は各種の電車等に乗ること自体への憧れも、子ども時代から継続して持ち続けている。つまり趣味的に、単独行で堪能できる日々のコースを構築した。
 基地はグリンデルワルトの自己評価でベストのホテルとした。個人経営の二つ星ホテルだが、谷に面した南側の部屋にはバルコニーがあり、視界が十二分に開ける環境で、目の前にアイガー北壁を仰ぎ見る日々となる。かつ、駅は1分ほどの至近にある。
 南側の部屋はシングル(とツイン・ダブル)があり、7連泊する部屋の確保が最優先課題だった。スイスのホテルは、1年前(11か月前)から発売になり、条件の良いホテル・部屋を購入#しておくことは自由旅行における要点の一つになる。加えて、朝食が充実し、部屋に無料Wi-fi環境が整備されていることも選択条件に加えた。[#:税込価格のBooking.com日本語版がオススメ]
 スイスパスは数種あるが、8日間使用タイプ[:レイルヨーロッパで購入し、自宅へ郵送]とした。スイスに到着し、基地に移動する日と、最終日に基地から空港に移動する日のほか、全日6日間の利用となる。かつ、初日と最終日も有効利用したいわけで、となれば、航空機の選択が決まる。
 日本発着で、スイスに午前中に着陸し、夕刻にスイスを発つのは、Turkish Airlines(旧トルコ航空)のみである。金曜日の勤務を終え、関空に移動し、帰国は日曜日夕刻に関空着(:バスをOCATで乗り継ぎ、帰鳥は23時頃で、翌月曜日は通常勤務)。スイスの空港はジュネーブを選択した。
 ジュネーブ空港発着とした理由は4つ。① 速度を落とし、高度を下げつつ着陸に向けた北側機窓(Airbus A330-300機の後方K席)から、雲が湧きにくい朝の時間帯にスイスアルプスを眺めることが可能な飛行ルートであること、② 10:20に着陸した後、スイスパスを活用した移動距離も長めであること、つまり、ルート選択を含めて、移動自体を楽しむことが出来ること、かつ、③ 復路が18:30発で、最終日もスイスを楽しめること、④ 離陸後、機の後方A席から、夕の陽光を浴びたスイスアルプスを眺めつつの飛行が期待できることにあった。ただし、④ は雲が湧いている可能性が高いこと、速度が速いことから、往路ほどには楽しめない。(実際、復路は雲が多く、かつ、飛行ルートが想定外で、スイスアルプスを眺めるコースから北へ外れていた。)
 ホテルを起点にした連日の日帰りコースをシミュレーションした結果、自己評価で、秀逸であったことから、気心が知れ、体力的にも難がない仲間を誘うことにした。ヒロさんが「行く!」と回答した。
 彼が「自分は“乗り鉄”・“撮り鉄”ではない」と伝えてきた。自身、同用語を初めて知った次第で、配慮し、スイスパスで巡るのは控え、スイス(西欧)初体験となる彼のためにベルナーオーバーラントの素晴らしさを実感できる3つの企画をした。
 ① 到着日、迂回する観光コースをのんびり移動するのを止め、短時間の都市間ルートを選択した。ホテル到着後、15:19発の電車に乗り、ロープウェイ、山岳鉄道(Bergbahn Lauterbrunnen–Mürren; BLM)を乗り継ぎ、ミューレン村へ。さらに、高山植物が広がるアルメントフーベル(Allemendhubel 1907m)に最終17時発ケーブルカーで登り、散策しつつ約400mを降りてくるプラン
 ② 最終日に[チェックアウトをし、スーツケースをホテルに預けた後]至近のゴンドラに乗り、フィルスト(First 2167m)に登り、バッハアルプ湖(Bachalpsee 2265m)への往復に約4時間
 ③ 全日を費やして、メンリッヘン(Männlichen 2343m)に登り、クライネ・シャイデック(Kleine Scheidegg 2061m)に降りて、さらに、線路沿いのトレイルをヴェンゲナルプ(Wengernalp 1870m)まで歩くこと
 結果、ベルナーオーバーラントの3企画を体験したことは、自身にとっても正解であった。
 ハイキング・トレッキングに係る各種コースのルート、高低差、足元の環境、所要時間や難易度を自由設計ルートで得ることが出来るサイト(
www.komoot.de/plan)がある。かつ、別の有用・秀逸なサイト(www.outdooractive.com/en/)も参考にした。これらを基にしてシミュレーションをして臨んだが、実は、歩行ルートに係る所要時間は、身長が高く、下肢の比率が大きい西欧人向けの目安であることを、体験研修させられることになった。つまり、普通の日本人女性では歩けないことが分かったのは幸いであった。妻を誘う際は2倍、それ以上の時間をかけることになる。
 以上、前置きが長くなった。シリーズ「スイス悠々」を書く際には必要条件に思えたので・・・。
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 7月5日夜の帰国後、県医師会の担当理事T先生から電話があり、会報8月号の表紙裏「散歩道」に写真提供と解説文を頼まれた。帰国した直後のタイミングであり、内心驚いた。「マッターホルン八景」の組写真と解説文をお届けした。
 本シリーズの第1回は「マッターホルンを仰ぎ見つつ」です。

ツェルマット(1608m)へ上る車窓右手に朝陽で輝くヴァイスホルン(4505m)と美しい氷河(9:30;左)。進行方向ほぼ正面・南南東方向に再々顔を見せてくれた丸みを帯びた優雅な4164mのブライトホルン(9:33;左中)と、寄り添う対照的な黒く尖ったクライネ・マッターホルン(3883m)。ツェルマット到着後に姿を見せたマッターホルンは4478m(9:56;中右)。スネガ(2281m)からブラウヘルト(2571m)へはゴンドラで移動(10:22;右)

 グリンデルワルト発6:49の列車に乗った。スイスパスを活用して巡るには、ベルン、シュピーツやインターラーケンが好都合だが、今回は基地を体験しておくことにも意図があったので、余分な移動時間が生じるが、これを是として捉えた。
 グリンデルワルト~インターラーケン間のベルナーオーバーラント鉄道(Berner Oberland Bahn; BOB)は新型車両も窓の上半分を下すことが可能な形式だった。再々の乗車は、時間帯や陽光が異なり、窓から顔と手を出して、横の景色や上方の山並みもだが、カーブになると先頭車両・後方車両を覗き見しつつ、写真を撮るなど、“乗り鉄”・“撮り鉄”的行動を始終繰り返した。
 ヒロさんは感動を言葉に発しつつ、小生と同様の鉄道少年的行動を続けている。彼は少年期にジオラマに憧れたとのことで、現地での行動が共通していることに、小生は安堵した。
 6月30日(火) にマッターホルンの登山基地として著名なツェルマット Zermattに出かけることを決めた理由は、滞在中、全日快晴の日を選んでのことだった。根拠は、帰路の夕刻に、途中にあるカンデルシュテークKanderstegで下車し、順光に映える峰々とオエシネン湖Oesinenseeを眺めること。
 往路は新しい長大トンネルをミラノ行ユーロシティ(Eurocity; EC)に乗り、景色を眺めることなくの高速移動だったが、復路は、時間がかかる旧線♭を観光列車(レッチベルガーLötschberger)で登るルートとした。
[♭:ツェルマットとインターラーケンを往復する際に、新旧両線の基点となるヴィスプVispとシュピーツSpiez間の所要時間は、新線が27分、旧線は79分]
 スイスパスはケーブルカー・ロープウェイが、例外$を除いて、半額で購入できる。パスは、入国時に駅員がパスポート情報等を手書きするアナログ切符なので、各発券窓口で、パスを提示し、往復return・片道one wayを告げ、対面購入することになる。
[$:ユングフラウヨッホに上がるユングフラウ鉄道は25%割引。スイスで登山が一般化した発祥の地、リギ山登山鉄道とロープウェイは、例外的にスイスパスで無料]
 この日は、スネガ(Sunnegga 2288m)までの往復と、スネガからブライヘルト(Blauherd 2571m)までの片道を購入した。数通りの購入方法がある中で、最安値になるため・・・。わずかの差だが、そこは鉄道少年的関心を持ち続けているが所以。
 定刻9:50にツェルマット到着後、駅から東へ、ツアー客が多用するゴルナーグラート鉄道沿いに歩き、間もなくマッターフィスパ川に出る。マッターホルンが美しく出迎えてくれた。至近の地下ケーブルカー Funicular駅から3分で高低差約680mを登り、スネガへ。即、隣接のゴンドラGondola lift乗り場からブラウヘルトに上がった。雄大な景観に心を奪われながらの夢のような7分間。
 快晴に誘われ、この地で1時間余分に費やすことにし、3湖巡りを4湖巡りに変えた。

森林限界を超えた高度にあるシュテリ湖(2537m)界隈にて | ゴンドラで上がったブラウヘルトからの散策路は広大な絶景を眺めつつ、[難易度1・体力1]と評価される緩やかな下り坂コース (10:33;左)。湖面向こうのマッターホルンが綺麗(10:57;中左)。シュテリ湖の周囲には高山植物の群落(11:03;中右)。湖から流れ出る渓流にも魅せられた(11:18;右)

 10:30頃に到着したブラウヘルトは好天に恵まれ、2500mを越える標高だが、肌寒さは皆無で、紫外線を十二分に浴びるのを覚悟した。森林限界を超え、人が住めない環境に多くのトレッキングルートがあるが、図上研修済であったこともあり、地図を見ずに歩き出した。多くあるトレッキングルートの交叉路には、行先を示す黄色の案内板があり、これも目安に歩き続ける。
 初めての地であり、時間距離の実感は、当然ながら乏しい。いわば、身体的に負荷を与える攻めの歩きとなったが、心は豊かであり続けた。要所で立ち止まり、撮りつつの素晴らしい時間に恵まれた。ここに居て、歩いている現実を二人で確認し、心身の健康、家族や職・職場に恵まれていることなどに感謝表現をしつつの行程だった。
 最初の目的地シュテリ湖(Stellisee 2537m)を視野にとらえて、感動が頂点に達した。つまり、小生の記憶に残る約60年を通じての最上級の感動シーンに至った。(もっとも、同様水準の感動が全日かつ滞在中持続したのだが・・・。)
 高山植物の名は頭に入力されていない。同様に、著名な高山の鑑別も出来ない。感動しつつ、愛用のデジカメでマッターホルン(Matterhorn 4478m)をビデオ撮影★した際にも「モンブラン」と話しており、低水準と分かる。マッターホルンの左側(東側に)最高峰のモンテローザ(Monte Rosa 4634m)がある。氷河に覆われた丸みを帯びた美しい山頂を見て、動画に「モンテローザ」と解説したが、帰国後に調べたら、ブライトホルン(Breithorn 4164m)と分かった。スネガ~ブラウヘルトからはモンテローザは見えないのかも知れない。いや、見えているが、見逃しているのかも・・・。
[★:You Tube に小生の姓名を入れて検索 ⇒ スイスの短編動画35本]
 シュテリ湖を後にし、グリンジ湖(Grindjisee 2334m)への下り道も素晴らしかった。小生の語彙では形容が不能で、写真でも限界がある。機会を見出して、是非、体験して欲しいと願う。
 高山植物が咲き乱れる中、グリンジ湖に流れ入るせせらぎは、グリンジバッハGrindjibach。バッハと言えば、中学時代の音楽で、訳も分からずに記憶に残っているのが、“音楽の父”と聞かされたヨハン・セバスチャン・バッハの Bach は小川の意味で、ドイツに留まる人生で、一方、“音楽の母”ヘンデルは海を越え、英国での活躍が目立ったことを思い出し、会話しつつ歩いた。

マッターホルンの象徴的な写真スポットであるグリンジ湖(2334m)界隈にて | 高山植物が群落を成す環境下、流れる渓流はグリンジバッハ(11:24;左)。針葉樹林の横にある青い空を反射したグリンジ湖を目に留めて、期待感が高まっていた界隈(11:27;左中)。澄んだ青空・静かな湖面・樹木の緑との対比が美しいマッターホルンの絶景(11:46;右中)。鏡マッターホルンを含めて、ヒロさん撮影の記念写真(右)

 2000~2500mのスネガ周辺には、“・・・bach”なるせせらぎが多くある。が、せせらぎの感覚は雪渓が溶けて流れている小川が似合い、一方、氷河が溶け出したbachは、水量が多く、「落ちたら命がない!」と思えるほど凄まじく、対比が著しい。
 次にめざした、グリンジ湖も雪渓が溶けて、水が溜まった池で、風がない好天の場合は、マッターホルンが湖面に映り、木々の緑との対比もあり、こよなく美しい著名な撮影スポットである。実際、絵葉書やポスターの中に身を委ねた感覚になった。
 小川が流入する東側はなだらかな斜面で湿地となっており、流れが急落する西側には木製の歩行路が整備されていた。ここから、家族連れが降りてきた方向に歩むと3湖巡りの当初計画となるが、この日は変更し、さらに急傾斜を下り4湖巡りを選択した。
 この日欲張って追加したモシェ湖(Mosjesee 2140m)は、他の3湖とは湖面の色が全く異なる。
 散策路から垣間見て実感したことでもあったが、湖面はコバルトグリーンで、透明度は低い。つまり、氷河が溶け出した流れがたまった湖と分かる。が、地図で確認した際、流入する川・渓流がなかった。現地で分かったのは、地下水流が注ぎ込んでいたこと!
 改めて、グリンジ湖から流れ出る小川を見ると(www.outdooractive.com/)、二つの流れの一つは途中で地図から消えていた。つまり、モシェ湖は、おそらくフィンデル氷河が溶け出した流れの一部が地下水流となって、モシェ湖に流れ込んでいると思えた。
 モシェ湖まで降りる観光客は激減した。グリンジ湖からの下りは、一部、それまでとは異なり急な場所があり、かつ、想定外だったが、崖から崩れた岩に覆われたガレ場もあった。一方、木立の中の平坦に近い散策路もあり、樹木の間からマッターホルンを眺めながらの静寂な環境に浸ることができた。
 わずかに鏡効果で湖面に映るマッターホルンを湖畔に佇み眺めた後、登りに差し掛かった。土の小路で、周囲は高山植物の群落が続く秀逸な環境。勿論、目を上げるとマッターホルンが美しい。
 周囲の環境が俯瞰できる稜線まで登り、座して若干の飲水休憩とした。湿度が高くないので、汗ばんでも不快感はない。但し、紫外線は強いが・・・。この日で、小生の鼻・下顎は真っ赤になった。紫外線防御用帽子の効果で顔の上半部との対比が目立ち、帰国後某看護師は「ピエロのようだ!」とも。小生「年末まで続こうから忘年会に使えるかもネ」と返答。

氷河が溶け出した神秘的な色のモシェ湖(2140m)界隈にて | 若干のガレ場と急な下りもあったが、樹木に包まれた路は心地良い(12:16;左)。林間の散策路正面に神秘的な色合いの湖が眼下に見えてきた(12:21;左中)。コバルトグリーンのモシェ湖(12:25;中右)。スネガに登る土の小路はやや急坂だったが、高山植物の群落の中で嬉しかった (12:31;右)

 ガイドブックにはツェルマットから手軽に短時間で行けて、マッターホルンの山容が美しい地としてスネガが紹介してある。ツェルマットから3分で上がったスネガのケーブル駅から少し下ったところに、ライ湖がある。ここも湖水は透明で澄んでおり、風がない好天には、マッターホルンの全容と、湖面に映える逆さマッターホルンに出会える。
 素晴らしい環境の中を歩き続け、4湖目、ライ湖(Leisee 2232m)に着いたと分かったのは、湖面を見る前に上半身裸の子どもたちと遭遇したことから。われわれは東南東方向から登り、ライ湖に到着した。それまでの3湖と比べ、人が多いライ湖畔に座し、持参した水とバナナ・パンでの昼食・休憩。
 ライ湖の界隈は「スネガ・パラダイス」として、手軽な山岳遊園となっている。よって、火曜日だったが、家族連れも目立ち、女性はビキニスタイルで寝そべっている人もいた。標高2232mの湖畔で肌を晒して寝そべる環境・文化は日本にはない。
 地下ケーブル駅とほぼ高低差がない至近地に360度の展望が楽しめる(車椅子でも到達できる)スネガ展望台がある。東側稜線が雲に覆われ始めたマッターホルンを目に留め、踏破したルートを確認し、感慨にふけりつつ、別れを告げて、ツェルマットに降りた。

スネガ山岳遊園(スネガ・パラダイス)にあるライ湖 (2232m)界隈 | ここでも無風で、鏡マッターホルンが撮れた(13:13;左)。湖岸で肌を晒してくつろぐ大人や遊具ではしゃぐ子どもたち(13:16;中)。

湖畔から少し上がるとケーブルカー駅の至近にマッターホルン展望台がある(13:27;右)

 この日はオエシネン湖に立ち寄るために、時間制約があり、ヒロさんが筋肉疲労を訴えるほどに速歩調で歩き回った。ブラウヘルトからスネガまで4湖を巡った行程を確認したら(www.komoot.de/plan)、下り460m、登り150mの範囲内、7.58kmであった。疲労感なく、攻めの速度で歩けたことに感謝!
 なお、モシェ湖を止めた3湖巡りの想定では、下り360m、登り50mの範囲内で、5.73kmに留まる。これなら、日頃歩いていない日本人女性でも達成可能でしょう。あなたもいかが?

スネガ SUnnegga からゴンドラでブラウヘルド Blauherd に上がり、4湖を巡って歩いたルートを示しました。参照:outdooractive

※スイスを歩く際には、komoot も非常に重宝します。

※ 本稿は鳥取県東部医師会報 随筆欄に掲載・連載(レイアウトは異なります)

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