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〔続 スイス悠々〕

(17)ライン渓谷を散策 参照:鉄道紀行13 ライン渓谷

渓谷の始まりだ!13:33 (左)。ライン渓谷13:37(中)。期待感に胸を弾ませつつの車窓13:38(右)

 2019年7月、好天に恵まれたことで、3日連続山歩きをし、「足が疲れた」と、同伴の女性二人が悲鳴を発した。日本では体験し得ない2000~2500m界隈での長時間の歩きは「空気が薄いから疲れる」とも・・・。彼女らのスマホでは、スイスに到着後4日間で70km近くの歩行距離だった由。小生は全く疲れを感じなかったが、彼女らの訴えに応えて、山が雨・荒天の際に準備していたコースを提案した。
 了解を得たのは、「乗り鉄」趣味人用の車窓を楽しむ、足休めの目的に適う、全日行程の旅でした。勿論、スイストラベルパスを保有しており、全区間適用です。
 具体的には、連泊中のSpiezシュピーツから特急IC8で南へ。35分の乗車で終点のBigブリークに到着。乗り換えた、窓が開くRegio各駅停車の最後尾車両で、車窓を堪能したDisentis/Mustér行の行程は、車窓からライン川の源流域を眺めたことなど、本紀行(11)Regio車窓堪能的乗り鉄記念日と重複するので割愛します。本稿の本番は、前年・2018年に達成し得なかったライン渓谷です。
 Disentis/Mustérからの下りは、線路幅が新幹線と同じ標準軌に変わるRhätische Bahnレーティッシュ鉄道(Rh)になるので、氷河急行然りで、車両を乗り換えることになります。

独特の色合いで多様性に富んだライン渓谷は車窓から一時も見逃せない:規模は期待したより小さい・・・

 Disentis/Mustérからの下りは、線路幅が新幹線と同じ標準軌に変わるRhätische Bahnレーティッシュ鉄道(Rh)になるので、氷河急行然りで、車両を乗り換えることになります。

 さて、Disentis/Mustérで乗り換えて、前方ライン川沿いに下るRegioExpress地域間急行は初めての乗車で、幸い、窓の開く旧型車両でした。発車後40-50分は牧歌的な風景が続き、やがて谷合、ライン川沿いの走行となり、一気に期待感が膨らみます。
 独特の色合いで多様性に富む車窓は一時も見逃せない。スイスのグランドキャニオンの愛称がありますが、本場(映像・写真)と比べて、小規模で穏やかと見ました。

渓谷の景勝地Versam-Safienで下車 (左)。Rheinschlucht ライン渓谷の河畔へ(中)13:44。同下流域 (右)

 ライン渓谷について、スイス政府観光局は「山々を流れる数本の小川が、前ライン(フォーダーライン)と後ライン(ヒンターライン)という2つのライン川の源流を形成しています。スイスのグランドキャニオンともいわれる岩壁が川の両側にそびえたつライン渓谷は有名なハイライトのひとつ。白い石灰岩の間を青緑色したライン川が流れていきます」と解説しています。RegioExpressは1時間に1本走っているので、せっかくならライン渓谷で下車して散策を・・・と狙いましたが、ネットでは情報が出てこない。で、地図を検索し、当たりをつけて、行程を決めました。
 定めた下車駅は、邦訳がないVersam-Safienです。愛用の
komoot - Route plannerで1時間弱の散策行程を整えました。

ライン渓谷:komoot はRheinschlucht ドイツ語、Google MapのRuinaultaはロマンシュ語

 具体的には、komootのRoutenplanerで、起点にVersam-Safienを入れ、一旦これを移動し、終点にVersam-Safienを入れ、経由地を設定し、Aを本来の駅に戻すことで、散策路を決めます。
 今回は、駅北側至近の川縁に景勝地のアイコン(目)とRheinschluchtライン渓谷が地図に記されており、まず、立ち寄る
ことにしました。蛇行するライン渓谷が南に流れ下る地点には、グーグル地図にRuinaultaライン渓谷の表記があります。調べると、Rheinschluchtはドイツ語、Ruinaultaはスイス第四の国語である当地に限られるロマンシュ語です。(付:英語はRhine gorge)
 渓谷が再び北に大きく蛇行する地点にFlussschleife の表記(英語なら River Loop つまり蛇行) があり、時間的にこの地
を折り返し地点と定め、かつ、復路に列車の時間調整的に再度川縁に立ち寄る設計をしました。

林間の散策路を抜けたら大きく蛇行するRuinaultaライン渓谷の中心地(左)13:57。同下流域(右)

 稀有な機会ゆえ、もう1本列車を遅らせて、現地に約2時間の滞在となれば、さらに歩き、堪能し得る選択肢もありました。が、2019年の夏はスイスでも真夏日(部屋にはエアコンがなく大型のうるさい扇風機で凌ぐ熱帯夜のような夜)が続き、体感温度30℃以上の炎天下での約2時間は、主役の2人の女性(婆)には無理難題でした。ホテルを8時半前に出て、シュピーツ08:36発の特急に乗り、ライン渓谷に約1時間滞在した他は、駅での乗換での歩きを除くと、計7列車の乗継で、シュピーツ帰着18:34ゆえ、約10時間の行程でしたから・・・。この日の主目的は足休めでもあり・・・と、未練がましく書くのは、仮にライン渓谷に約3時間滞在しても、シュピーツ帰着は20:34で、日差しが残る時間帯です。自身にとっては、またの機会の宿題となりました。そう、サン・モリッツ滞在の際なら、9時前にホテルを出て、ライン渓谷に5時間滞在しても、19時過ぎにホテルに戻れる。夏季にサン・モリッツに連泊するとBergbahnen inklusive企画で、RhB区間は乗り放題ですから・・・。アフタ・コロナ待ち!

ライン渓谷南側の散策路(左)。川の流れが早く水量は多い(中)14:00。下流側のFlussschleife蛇行基点は崖(右)14:02

 木陰に入れば良いのですが、散策路の多くは陽光が射し、幸い湿度が低いので、日本とは異なりますが、暑い日々が続き、スイス(≒避暑)のイメージが怪しくなるほどの2019年の夏でした。語らいつつの彼女らの歩みは緩速で、無理は出来ないと、滞在時間延長を提案することもなく、静寂、稀有な環境に親しみつつ、時々歩みを止めて、眺め、撮り・・・のひと時でした。
 列車の走行音が聞こえ、注視していたら、歩いて来た方向から下る氷河急行と遭遇!瞬時でしたが、及第点の“撮り鉄”撮影が出来て、及第点の“撮り鉄”撮影が出来て満足し、事前に計画した通りFlussschleifeこと、大きく北に蛇行(River Loop)する地点で引き返しました。
 常にそうですが、旅行では復路は早いのが通例です。最初に訪れた大樹の木陰に恵まれるラインの川縁で、二人は少女となり、石投げ遊びなどもしつつの時間調整でした。

氷河急行が下って来た(左)14:05。Flussschleifeで折り返し(左中)14:12。最初に立ち寄った景勝地の河畔で石投げ遊びもしつつ時間調整(右中)14:19。時間を見て、至近のVersam-Safien駅に戻りRegioExpressに乗車(右)14:38

 当地は初めての訪問でしたが、勿論、道に迷うことはなく、“3密”無縁の環境です。まれに、西洋人に出会い、挨拶し、また、川で遊ぶ様子を見かける程度でした。が、駅に戻ってみると、大人を交えた中学生と思える20人程度が駅に待機しており、「アリャ、どこから沸いてきた?どんな過ごし方をしていた?」と思った次第でした。或いは、渓谷の上にある道路をバスで来て、渓谷を眺めた後、散策路を降りて来たのか・・・。問いかけるほどの独英会話力はなく、推量に留まったわけです。
 Versam-Safien駅の北側、400m弱の崖の上に、渓谷を眺め降ろす展望所が数か所あります。今後の自由旅行で、自身がそこに上がる機会はあり得ません。日本のツアーが立ち寄る企画も知りません

ライン渓谷に係る鉄道橋を通過中(左)14:41。前方に吊り橋が見え14:43、通過後も振り返り撮影(左中)14:44。またもや大きく蛇行し、渓谷美を撮影(右中)14:46。通過後、古城跡の崖が撮れた(右)

 再度乗車したRegioExpressも幸い、窓が開く旧車両で、最後尾車両は貸し切り状態でした。
 発つと、散策した河畔を走行し、トンネルを抜けると、数少ない鉄橋を通過します。見逃さずに撮影し、その後は、車両の進行方向右側に移動し、ライン渓谷と周囲の景色に見惚れつつ、撮りました。が、渓谷は間もなく終わりで、結果、Versam-Safien駅で下車した界隈が最良・最上だったとの認識です。
 前方に吊り橋を見て撮り、通過後に振り返り撮影も。調べたら Hängebrücke Punt Ruinaulta の記載。つまり、ライン渓谷に係る稀有な吊り橋でした。場所はTrin駅の西200m余の地点で、事前シミュレーションでは同駅での下車も考慮していたのです。なお、Hängebrückeはドイツ語、Punt、RuinaultaとTrinは、ロマンシュ語なのでしょうか・・・。TrinはGoogle翻訳では(ロマンシュ語がなくて困惑していますが、)デンマーク語としてヒットし、英Stepとしてヒットします。つまり、“昔”から吊り橋があり、このため駅名がStepを意味するTrinなのでしょうか・・・。

 次いで、またもやライン川が大きく蛇行する渓谷で撮影。調べたらBurg Wackenauなる、今では風化が進み崩れた石が残るだけの古城跡と分かりました。出城程度の小規模ですが、当時の通例で、通行税などを徴収していたのかもしれません。

鉄橋通過中のVorderrhein(V)前方ライン(左上)14:49。同下流側(左下)。Hinterrhein(H)後方ラインと合流しライン川に成る地点(左中)。Reichenau GRライヘナウ駅停車中(右中)。同駅発車後のライン川下流(右)14:54

 その後は穏やかな景観になり、間もなく、再び前方ライン川鉄橋を南へ通過。鉄橋通過後、川を眺め得る景色が失せて気が抜けた感を抱いたら、即時的に、またもや鉄橋を通過!撮り損ねました。実は、南から北に流れ、当地で前方ラインと合流する後方ラインを通過したのです。通過後に、慌てて撮り損ねた合流地点を撮影。列車は既に減速しており、間もなく Reichenau GR ライヒェナウ駅に停車しました。出発後、進行方向(・東側)左手に合流後のライン川を眺めつつの車窓で、本ライン渓谷紀行は終わります。
 なお、ライン川に関しては、本紀行(15)スイスのライン川紀行で、上質な環境を2時間余のクルーズ船で堪能した内容を書きました。本ライン渓谷は、連載(
11)・(15)の中間域になる紀行となります。

追記)この日の全日行程を Mapcarta - The Free Map を活かして備忘録記録としました。スイストラベルパスを活かした自由旅行を実践される方のために情報提供です。は乗車した列車と乗換駅

シュピーツから IC8 で終点の ブリーク へ。標準軌から狭軌に転じ、R522に乗り換えて上り、アンデルマットへ。R832で上り、山上湖のOberalpseeを眺めつつ、同名峠Oberalppassを過ぎて下り終点のDisentis/Mustérで乗換。標準軌のRE1740でライン渓谷の景勝地Versam-Safienで下車。約1時間の散策後、RE1744で、終着のクールで、始発のIC3に乗り、チューリヒへ。初日にも乗車した直通のIC8のレストランカーに乗り、同食堂車では5日ぶり、2回目の約1時間半滞在

 スイス政府連邦鉄道のオンライン時刻表での検索結果を示します。催行は2019年7月24日(水)でした。毎年、年末に時刻表改訂があります。(2021年ダイヤは2020/12/20の開示)

2021年7月28日(水)の催行をシミュレーションした結果をお示しします。2回に分けて検索し、目的を適えました。なお、ダイヤは不変でした。都市間の高速鉄道路線や新型車の導入などがあれば変更になるかと思います。
 下記は要点を集約した内容です。乗換駅(Change)表記や、列車の予約の可否などのコメントは割愛しました。2019年と異なり、OMが全列車に記載されています。確認したら、Masks mandatory for travellers aged 12 and over、即ち、新型コロナ感染対策で、12歳以上はマスク着用の義務付です。

SBB-timetable.jpg

豆知識 : ライン川は、スイスで最も長く375kmで、支流は広大でスイスの水面の80%を流れている。ディゼンティスからクール間は、レーティッシュ鉄道の路線で、ロマンシュ語の伝統が息づく美しい森と小さな教会が点在する印象的な区間です。やがて “スイス・グランドキャニオン”と称されるライン峡谷に入ります。約1万年前の氷河期末期におこった大規模な山崩れで形成された自然の造形美に圧倒されます。さらにライヒェナウを抜け、古都クールへ到着。(出典:スイス政府観光局 抜粋)

ホームページ版スペシャル:

車窓や河畔の散策では眺められない景観をスイス政府観光局の情報を活かして備忘録写真とした。

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