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〔続 スイス悠々〕

(18)シュタンザーホルン:前時代的フニクラーと二階建て最新のゴンドラ

シュタンザーホルンに上がる最初は、レトロな木製客席車で、緩傾斜のケーブルカー。満員で乗れず。駅員の様子を含め、ほのぼのとした絵本を連想 11:33(左)。一番乗りで最後尾席に立ち、間もなく発車11:45(左中)。シュタンスの街を眺めつつ緩傾斜面を緩速で上がる(右中)。牧草地帯の向こう・北側にはピラトゥス山(右) 

 シュタンザーホルンを知ったのは、スイストラベルパスの適用区間となったことが発端でした。2015年初夏から毎年トラベルパスを使ったことで、年によって、観光地のキャンペーン的に適用となる山岳交通があると知ったのです。
 例外は、山岳レジャー発祥の地とされるリギ山で、山頂に上がる赤・青2系統の登山電車と、ルツェルン湖から赤い登山電車途中駅までのロープウェイは毎年適用区間で、つまり、パスを提示すると追加料金なしで乗車できます。大半の山岳交通はパスを提示すると50% off になります。

 例外的に、ユングフラウヨッホに上がるユングフラウ鉄道は、スイス全土において、唯一25% off で、相対的に高い路線となります。
 2017年は竜が住むとの伝説がある険しいピラトゥス山が適用区間で、連載
(4)「ピラトゥス山~リギ山:大周遊」でご案内済です。

 女性二人を伴った2019年は南側に隣接するシュタンザーホルンが適用区間だったのです。
 3日連続の山歩きで、彼女らの「足が疲れた」を癒すための“乗り鉄”的足休め企画は、前日の
ライン渓谷(本会報前号([ライン渓谷を散策]に次いで2日連続となりました。

牧歌的な風景に心が和む (左)11:50。ケーブルで牽引された車両の出会いは嬉しい:ブレーキを左手に、右手を上げ挨拶する乗務員が立つ下り車両を迎え(左中)、最後尾にも乗務員が立つ様子を含めて見送る(右中)。つまり、1両に係員が二人乗車。最後尾席ならではの光景を堪能(右)11:51

 さて、Stanserhornシュタンザーホルン1898mの魅力は、山自体より、鉄道ファンの小生にとっては初体験となるレトロの木製ケーブルカーと最新のロープウェイを乗り継ぐ行程にありました。
 結果は、大満足で、スイスの自由旅行において、アナタにもお勧めできる評価でした。
 さて、起点となるStansシュタンスへは、ルツェルンを起点とする観光列車LUZERN-ENGELBERG EXPRESSに乗り、ルツェルン湖畔を南下し、一駅13分の乗車で到着します。
 鉄道駅からケーブルカー乗り場までの地図は、愛用のkomoot(www.komoot.de)の route plannerを使い、Google map でも事前に確認しました。合わせて、鉄道駅の駅舎前、下山後に乗車する路線バス乗り場も視認しました。復路にルツェルン湖畔の桟橋に移動し、観光船に乗る計画のためです。
 観光列車をシュタンスで下車し、ホームを後方へ端まで歩くと、案の定、歩道に移行していました。勘を活かした省エネ的ルートです。これは地図では得られません。
 日本では改札口を通過するのが必定ですが、現地には改札口が皆無で、車内検察が全てなので、駅構内・ホームへの出入りには制約がなく、自由な選択です。駅舎内は運行情報や旅行資料の確認程度です。

 ホーム端から歩道を線路沿いに、ルツェルンに戻る方向・西に歩いて、最初の踏切を渡り、南方向に歩くと、ケーブルカーの麓駅は目前です。ゆっくり歩いて5分弱で着きました。
 レトロな雰囲気を感じ、乗客が多いことから、間もなくの出発と見て、乗車口へ急ぎました。が、残念ながら満員で、絵本に出てきそうな小太りの駅員さんが「次に乗れ。10分ほどだ」と。
 のんびりと次を待ちました。結果は正解で、幸い、乗車客の先頭で待機していたことで、望んだ最後尾を確保出来ました。彼女らは木製ベンチに座り、最後尾・裾野側に立つ乗務員とで計4名が並びます。

手を伸ばして前方を撮影(左)11:52。車両が近接したら線路脇にヒョイと退避し、通過後、即座に戻った高齢の清掃員(左中)。中間駅Kältiに間もなく到着(右中)11:55。乗換です。最新二階建てロープウェイ CABRIOの屋上に上がり、順光となる北側の麓側角に立ち、ダイナミックな構造とパノラマ景観を堪能します(右)11:59

 木製の窓ガラスがない客車ですが、最後尾となれば、視界に恵まれます。小生は順光となる北側の隅に(定番で座ることなく)立ったままで、雰囲気、景観を楽しみました。
 シュタンザーホルンについて、スイス政府観光局(www.myswitzerland.com/ja)の紹介文を引用します。「山頂へは1893年開通の歴史を誇るケーブルカーと2012年に誕生した世界初の画期的なオープンデッキの二階建てロープウェイが結びます。スイスの中央部に位置するシュタンザーホルンの展望台からは、約100kmのアルプス山脈の山並、10個の代表的な湖をぐるりと見渡す壮大なパノラマビューをお楽しみいただけます。」
 「Stanserhorn-Bahn シュタンザーホルンバーン」のアクセスは、「第1区間:ケーブルカー Stans シュタンス 454m~約9分~Kältiケルティ 711m」、「第2区間:ロープウェイ カブリオ Kälti~約7分~Stanserhorn シュタンザーホルン1850m」と具体的に示してあります。約1400mの高低差です。
 画期的な二階建てのロープウェイは愛称カブリオ CABRIO。浅学の身ゆえ、CABRIOを調べると、convertible 変換可能の意味で、自動車ならオープンカーが該当すると知りました。当ロープウェイの画期的な構造の特性に基づいた愛称と理解しました。
 構造の理解は素人には難解です。展望景観を楽しみましょう。

屋上立見席は360度の景観:北側にピラトゥス山。手前はルツェルン湖(左)12:01。北方向・裾野は麓駅があるシュタンスの街。湖は複雑な形状のルツェルン湖(中)12:05。シュタンザーホルン頂上が見えた(右)12:08

 当地は初の探訪で、3000~4000m級の高山は皆無ですが、湖が散在する360度の伸びやかな景観を堪能しつつ、思ったのが、「スイスにはどれだけのロープウェイがあるのか・・・、スイス5年目で、わずか8路線目か」と。で、帰国後、調べようとしましたが、不明なままです。
 「
スイスの視点を10か国語で」解説する公共放送協会 [ケーブルカーとロープウェイの国、スイス]にケーブルカーを含めて、計1700とありましたが、ロープウェイの数は不明です。(日本の現状は、冬季限定のスキー場を含め、ロープウェイが 155、鉄道事業法によるケーブルカーは 24、合計 179路線と、ウィキペディアにありました。)

 スイスを移動する際、、車窓から看板等を見て、ロープウェイの存在を知り、スイストラベルパスの適用交通機関地図に表示されていないと確認している例があります。個人で調べるのは困難至極!→
 さて、CABRIOから眺めていたら、「シュタンザーホルンの山頂だ!」と気づき、撮りました。
 山頂界隈に複数の散策路がありますが、紫外線が強い快晴であること、女性二人の足休め日としていることから、無理をせず、山頂展望台まで上がることに留めました。山頂のトレイルもkomootで調べます。CABRIOの山頂駅からシュタンザーホルン山頂展望台までは、上り40m、距離400m強です。

 日差しが強く、体感温度が真夏日の上り道です。彼女たちには「急がず歩いて良い」と促しました。

シュタンザーホルン山頂展望台にて肉眼でアイガーを認め、望遠撮影:Finsteraarhorn 4274m(F)はベルナーオーバーラント地方最高峰。馴染みのSchreckhorn 4078m(S)と、お天気山Wetterhorn 3692m(W)。Eiger 3970m(E)の左右にMönch 4107m(M)、Jungfrau 4158m(J) も同定(左)。ルツェルン湖の奥にRigi 1798m (右)

 肌に痛みを感じるほどに日差しが強い真夏日の上り道を、景色を楽しみつつ、意図してゆっくりと歩きました。日本と比べて湿度は低いのですが、急な上り道では、気づけば汗ばんでいたほどの気温に戸惑いを感じました。西欧も異常気象で、氷河の退縮が加速しましょう。

 水蒸気の影響で、鮮鋭度は落ちますが、幸いベルナーオーバーラントの山並が見え、北壁が特徴的なアイガーを視認しました。その他の名山は、山頂展望台にあるプレートと対比しつつ、確認をしました。
 山頂展望台は青空天井で、日陰は皆無であり、熱中症を意識し、早々に下り始めました。往路で確認済、トレイルに面した山小屋の北側の影を活かし、斜面の高山植物も眺めつつ、座して、持参した軽食でのお昼休憩。日陰では、風が心地良く、高温多湿の日本の夏と異なることを、改めて体感しました。
 計画通り、山頂界隈には1時間余の滞在で、下りCABRIOに乗車。往路と同様、乗車後に螺旋階段を上がり、屋上の北側裾野席を確保し、下界を主体に景観を楽しみました。

復路も最新CABRIOの屋上席を堪能:上って来るゴンドラとの行き交いはダイナミックな光景。13:20

 往路で見逃したゴンドラの行き違いシーンは、復路では広く見下ろすことになります。しっかりと視認し、タイミング良く満足できる上りのゴンドラ写真も撮れて、嬉しい限りのひと時でした。
 総称して、鉄道ファンと言うことになりましょうが、山岳交通やバスの車窓、観光船を含め、興味は尽きません。(7暦年齢は71歳が近いのですが、心的には相変わらずの少年レベルで発達停止!)
 復路の行程設計にはこだわりがありました。単純に、観光列車で往路と同一の行程は面白くない。シュタンザーホルンから眺め降ろすシュタンス至近で、フィッツナウに向かう航路があるルツェルン湖畔の桟橋 ベッケンリート(Beckenried See)を探し得ました。加えて、バス路線、観光船のダイヤもSBBスイス連邦鉄道(www.sbb.ch)のonline timetableで検索。結果、期待以上の行程に恵まれました。

下りの旧式フニクラは先頭席:彼女らは木製の椅子に座し、小生は立ち見を維持(左)。路線バスで移動中:最前列に恵まれ前方を撮影(左中)。ルツェルン湖畔の桟橋で待機(右中)。観光船に乗り、ルツェルンへ(右)

 シュタンスに降りて、鉄道駅前のバス乗り場 A で、路線バス311に乗車し、Beckenried, Postで下車、所要23分です。勿論、初めての路線ゆえ、的確な下車が必要で、幸い、運転席至近の席が確保できました。彼女らも中程の空席を確保し、バスの車窓を楽しみます。走行路線もSBBで事前に確認済で、途中から湖岸の生活道路を走るので、下車地を間違うことはありません。

 帰国後、「初めての地で、路線バスに良く乗れるわネ!」との感慨を聞かされましたが、ロンドン、パリ、ウィーンなど、各々の公式ホームページで鉄道路線と同様、簡易の路線図を含め“バス駅”の通過(ターミナルでは発着)時刻が得られるので、困ることはありません。

 鳥取市内もそうですが、日本はバス専用路線や、混雑時の優先道路などの整備遅れで、渋滞に巻き込まれ易く、生活道路を走る路線バスのダイヤは当てになりません。

 が、スイスなどでは、ほぼ定刻に、かつ、少なくとも、乗り継ぎがある場合は、乗客を困らせることなく走行します。扱いは、バス停でなく、鉄道並のバス駅です。

 また、生活道路を走る路線バスでは、見通しの良い小さなバス停は速度を落とさず走ります。初めての地ではバス停を通過したことに気づかないので、「何番目のバス停で下車」とのとらえ方は無効です。幸い、多くの新型バスには電光表示がありますので、何とかなります。建物が密集し、旗も掲げられている界隈で、到着間近と感じました。ベッケンリートの中心部(:郵便馬車由来の中心駅と分かるpost)で無事下車。気づくと、バスの停車地は、眼前が湖畔に面した広場で、目の前に観光船の桟橋がありました。

 この日も、建物が密集し、旗も掲げられているベッケンリートの中心部(:郵便馬車由来の中心駅と分かるpost)で無事下車。気づくと、湖畔に面した広場で、桟橋がありました。
 路線バス、観光船も鉄道と共にトラベルパスの適用区間なので、発券ボックスにはパンフレットを取りに行く程度で、花で飾られた桟橋界隈と、ルツェルン発(反対方向へ行く)観光船の接岸、出航の様子など、10分余の乗り継ぎを楽しみました。

 いつでも、どこでも、船に乗る前は期待感を抱きます。
 自由旅行は、非日常体験・危機管理の連続であり、生涯研修と言えましょう。百聞は一見に如かずで、是非、アナタもスイストラベルパスを活かした自由旅行の体験研修をお勧めします。
 この日の後半は、観光船をフィッツナウで降りて、赤い登山電車でのリギ山頂に上がる当初計画でした。

ルツェルンの旧市街はロイス川沿い(左)。庁舎の塔(左中)。広場の噴水(右上)。定番料理とスイス国旗のフォンジュ(右)

 が、彼女らは「十二分に堪能した。リギ山頂を往復するより、ルツェルン旧市街でチーズフォンジュが食べたい」と仰せになり、そのように配慮しました。 ルツェルン旧市街の名所を歩き、市庁舎 Rathaus Brauerei に入り、座りましたが、ここにはフォンジュがなく、「隣のスイス料理店にある」と彼に促され、移動。 スイス料理専門店Pfisternは、好天に恵まれていたので、店内席でなく、河畔の屋外席を確保。

 二人は「あこがれだったのよ~!」と。目出度し愛でたしの思い出になりました。
 ルツェルンを起点とし、観光急行、レトロなFunicular・CABRIOで往復、路線バス、観光船を堪能した周遊コースを地図で示しました。
 なお、ホテルはシュピーツ連泊で、往路は観光急行 LUZERN-INTERLAKEN EXPURESS等に乗車し、復路はベルン経由の、全日反時計回りでした。

本サイト用の広域地図です。シュピーツ発着で約13時間の全日行程でした。

地名・土地勘の事後研修 : Gindelwald と Andermatt の緯度が同等であることが分かります。Bern と Stans なども

 8つ目の組写真は、コチラの方が華やかで、雰囲気も伝わり、ウレシイなぁ~♪ お二人の許可が必要です。

ルツェルンの旧市街はロイス川沿い(左)。憧れが実現(中)。定番料理(右上)と、スイス国旗のフォンジュ(右下)

サイト(www.swissinfo.ch)で問い合わせました。が、残念ながら、回答はありませんでした。(2020/10/28現在)

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