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〔続 スイス悠々〕

(19)レマン湖クルーズ

車窓からレマン湖に建つシヨン城を眺め(左)、ジャズで著名な高級リゾート地のモントルーで下車し湖畔へ。ロシアの作曲家ストラヴィンスキー(中上)。優美な湖畔散策路を観光船の桟橋をがあるクラレンス地区へ(右)

 フランス語圏のレマン湖はトラベルパスで巡り始めた当初(2015年初夏)から、観光船に係る情報を探していたが、曖昧模糊としたままで諦め調だった。が、5年目、2019年7月の催行前に、一念発起し、再挑戦したら手掛かりが得られ、微調整を繰り返し、結果的には、自己評価で最上の全日行程が組めたのです。
 レマン湖は、
スイス政府観光局に「フランスとの国境になる中央ヨーロッパ最大の湖。アルプスのローヌ氷河からうまれたローヌ河が流れ込んでできた湖で、西端のジュネーヴから再びローヌ河としてフランスへと流れていきます。約150年の伝統を誇る湖船でクルーズが楽しめます」と。何せ、広いので、観光船で巡る航路を探す作業からの開始でした。広さは約581㎢(標高 372m)とあり、日本の湖との比較では、琵琶湖 670.4㎢(84m)より小さめで、霞ヶ浦 249.5(0m)の2倍以上。近隣の中湖 86.2㎢(0m)、宍道湖 79㎢(0m)、身近な湖山池 6.99㎢(0m)との比較もしました。
 本題から離れます。還暦記念でカヤックを開始し、12季目ですが、湖でのカヤックには今も関心が高いままです。阿寒湖 13㎢(420m)が湖山池の2倍弱と知り、新たな夢が・・・。パンデミック禍で、2020年初夏のスイスで初となるサン・モリッツでの連泊が不能となり、シミュレーションを重ねました。同地はホテル至近にサン・モリッツ湖があり、地域バスで少し移動すると計三つの優美な湖が谷合に連なることで、カヤックを漕ぐことを夢想したのです。さらに、夏季のスーツケースは余裕があり過ぎることで、試しにカヤックを入れてみたら、片面の収納ゾーンに収まったのです。達成感を抱き、早くもサン・モリッツ界隈の各湖での出艇地も確認済! さて、催行年は・・・?

クラレンスの小さな桟橋(左)。ローザンヌ始発の観光船(中)。観光船はレマン湖を南下しモントルーへ(右)

 2019年7月はシュピーツSpiez駅至近のプチホテルに連泊しました。で、地理面からレマン湖の東岸、ジャズフェスティバルで著名は保養地モントルーMontreuxを核として、観光船の検索をしました。
 検索はスイス連邦鉄道SBBの
Online Timetableとレマン湖クルーズのCGNを活かします。
 願いは、① 湖上にあるシヨン城を船上から眺めたい。② 乗換のみだったモントルー駅で下車したい。③ 下船はラヴォー地区にある桟橋で、世界文化遺産の葡萄畑を眺めつつ、高台にある鉄道駅まで歩き、④ ワイナリーで休憩し、⑤ オリンピック首都で、バレエコンクールで著名なモントルーへ移動。
 単純な検索ではヒットしません。CGNで、レマン湖南部、フランスと国境を成すSt-Gingolph (Suisse)からの観光船がヒットしました。[連泊地のSpiezで特急に乗り、南へ一駅のVispからRegio各駅停車に乗り換えて、途中、幹線から離れ、レマン湖の南岸を西へ伸びる支線を走り、終点のSt-Gingolph (Suisse)で下車し、湖畔まで6分ほど歩き、St-Gingolphの桟橋で乗船。モントルーの桟橋で下船し、10分余歩いて、同駅からInterRegioでローザンヌへ]は、願いと異なり、検索結果は不本意でした。
 試行錯誤を重ね、特急など高速列車で、モントルーに移動し、当地を起点に組んでみました。さらにアレンジをし、湖畔の散策も含めて整えたのが下記で、大満足でした。湖畔の散策については、Google 地図と komoot を活かし、初めての地における距離・時間感覚を整えました。
1)Spiez 08:36⇒InterCity⇒09:02 Visp 09:06⇒InterRegio⇒10:16 Montreux
2)モントルー駅から湖畔に降りて、公園と評せられる湖畔散策路を北へ、反時計回りに移動
3)Clarens (lac) 10:52 → [Ship 902] →10:59 Montreux(lac) 11:01 →・→ Château-de-Chillon (lac) 11:16 →・→・→ 12:00 St-Gingolph(Suisse) (lac) 12:00→ [Ship 903] → 12:26 Montreux (lac) 12:29 → 12:48 Vevey-Marché (lac) 12:51 → Rivaz-St-Saphorin (lac) 13:05 → 13:20 Cully (lac) (文末の航路図参照)
 フランス語圏であり、桟橋には湖lacが補記されています。公用語が4つあるスイス連邦鉄道の省略形は、ドイツ語SBB、フランス語CFF、イタリア語FFSで、局地使用のロマンシュ語は無記載です。
 ジュネーヴとイタリア・シンプロン方面をつなぐ幹線は、(伊ミラノ中央駅を結ぶECが稀にありますが、主力は)国内準特急相当のInterRegio (IR)  が都市間を30分毎に結びます。ジュネーヴに向かう際は、レマン湖の東南部から湖畔の走行となります。車窓左手、湖に浮かぶシオン城は見逃せません。IR は特急車両であり、窓が開きません。何とか、車窓から記念写真が撮れました。
 モントルー駅は乗換のみの体験で、駅舎に出たことはありませんでした。が、事前に地理を調べていたので、湖畔までの高低差が予測より大きかったことを除けば、難なく歩き、湖畔の優美な景色に見惚れました。同伴の二人が、初めての地で迷うことなく歩く小生の様子に驚きの感想を話したことで、自身にとっての当たり前が、実は、稀な能力かも知れないと感じた次第でした。

乗下船客が多いモントルーの桟橋(左)。同桟橋を出航し、湖畔沿いに南へ(中)。船上から眺めるシヨン城(右)

 湖畔散策路を北へと歩きます。樹木、花が多く、ジャズ関連の彫刻などが点在し、整備されていました。湖畔近く、南から見たら彫金の白鳥か・・・と思っていたら、先んじていた妻が正面下の解説を見て「ストラヴィンスキーよ!」と驚きの発声。自身も確認しました。正面からは、パリでの初演時に大きな反響・論議があった“春の祭典”などのイーゴリ・ストラヴィンスキーと分かる彫金像でした。調べたら、フランス各地に居住歴があり、フランス市民権も得ていたと知った浅学の身です。レマン湖、モントルーとの関係性は不詳ですが、彼の音楽にはジャズを感じさせる曲が少なからずある所以かと想像しています。
 初めての地なので、komootのRoute plannerとGoogle地図で事前確認を済ませていました。モントルー駅からクラレンスの桟橋までは約1.4km、所要時間は17分、21分の表示ですが、日本人の女性が歩くので留意します。

 各々足の長い西洋人が普通に歩く速さが基準であり、初めての訪問地、それも彫像や樹木・花々に富んだ優美な湖畔の環境で、高齢女性二人が歩くとなれば、1時間あっても不足する懸念があります。モントルー駅に列車が到着し、クラレンスの桟橋から観光船が出航するまで36分ですが、下車後ホームを移動し、湖畔まで10m余(駅 395m、湖面 372m)の階段と、桟橋には5分前には到着したい願いを含めると、のんびりとした散策にはなりません。行程半ばからは、小生が先導し、歩き続け始めました。

東南岸に散在する桟橋に寄港しつつ南下(左)。フランス国境の町(中)で便名を変え、再びモントルーへ直行(右)

 湖畔の散策路は心地良い限りで、駅至近ホテル等が立ち並ぶゾーンから、次第に高級と分かる住宅が連なる地帯を経て、桟橋に近づきました。約5分のゆとりを持って現地に到着し、至近の公園Parc de Verte-Riveにも入り、若干の時間調整をした後、小生は一足先に無人の桟橋の先端へ。観光船が近づくのを見て、二人に声をかけ、接岸の様子、乗下船用ブリッジが置かれる過程を見て、乗船しました。乗船しました。下船客は皆無で、乗船客は我々3人のみ。なお、乗船時と船上にいる間、検札は皆無でした。ドイツ語圏の観光船では、必ず検札があるのに、流石、ラテン系・フランス語圏だと、妙に感心した次第でした。
 女性は後甲板の椅子席、小生は左舷最後尾端を確保。出航すると、前方にはモントルーのホテルなどが見えます。桟橋に近づくと多くが席を立ち、二人は屋根付きの席に移動しました。桟橋には乗船客が列をなしていました。クラレンスの桟橋まで歩いて乗船した行程の自己評価は花◎でした。

再び賑わうモントルーの桟橋(左)。外輪船が待機中だった(中)。モントルーを発ち、ヴヴェイへの航路(右)

 モントルーの桟橋を発つと、レマン湖の東岸沿いに各桟橋を経由する(列車なら各駅停車相当の)902便の選択ができたことにも高い自己評価を下しつつ、左舷最後尾甲板でのんびりと過ごしました。
 シヨン城を遠望し、やがて、城の至近で減速し、南側のChâteau-de-Chillon(lac)シヨン城桟橋で停船。湖岸は公園で、若干の乗下船客がありました。
 その後、ローヌ川がレマン湖に流入する地を眺め、東南端から湖岸南側の桟橋へと移り、観光船902便は終着サン=ジャンゴルフSt-Gingolphの桟橋へ。湖上から見ると思いがけず建物が多く、フランス領と合体した街であるためと承知しました。調べると、扇状地に広がる集落内の小さな川が国境で、湖岸のビーチは8kmある保養地です。国境を成した歴史はハテ・・・。

 12時過ぎに寄港した観光船は、15人程度が乗下船し、便名を変え、903便として出航しました。
 この後は、レマン湖の沖合を一気にモントルーへ、高速での航行です。 (文末の航路図参照)
 St-Gingolphの桟橋を発つ頃に、電車が左・東から街に入線してきました。甲板上からですが、撮れて、かつ、望遠撮影もできて、ここは鉄道ファンとしての満足感も得た次第でした。
 そして、再び、丘陵地から湖畔まで建物が立ち並ぶモントルーに近づき、桟橋では再度多くの観光客が下船し、乗船して来ました。その頃、北側至近に大型の優美な外輪船が待機中でした。しっかりと撮影し、かつ、903便が出航した後、外輪船が桟橋へゆっくりと移動する様も後甲板から目に留めつつ、望遠撮影も・・・。外輪船は湖面から眺めるとステキです。

 903便は、モントルーを発つと、ヴヴェイVevey-Marché(lac)へ直行します。
 往路で乗船したクラレンス地区の桟橋沖合を通過し、レマン湖の北岸を眺めつつ西へ。途中、モーターボート、ヨットとの出会いなどを含め、優美なひと時でした。

世界文化遺産の葡萄畑が広がるラヴォー地区の中心地ヴヴェイは約20年毎開催ワイン祭りの最中だった(左)。同桟橋もモントルー同様、賑わっていた(中)。出航し、レマン湖北岸沿いの航路を西へ(右)

 人口2万人弱のヴヴェイが世界文化遺産の葡萄畑が連なる地帯の中心都市だと知ったのは、レマン湖の観光船を調べ、下船地を模索していてのことでした。スイス政府観光局には「世界遺産ラヴォー地区の美しいぶどう畑に囲まれたレマン湖畔のリゾート。チャップリンなど、多くのアーティストに愛されてきた地としても知られ・・・ 世界的な企業ネスレの本社も・・・ 中世からワインの産地として栄え・・・ 今も旧市街を中心に、古い路地や15~19世紀の歴史的な建物が残っています。隣接するモントルーとともに世界の王侯貴族や芸術家たちに愛されてきた湖畔のリゾート地でもあり、由緒あるホテルが数多く・・・ なかでもヴヴェイ郊外に家を建て、晩年を過ごしたチャップリンはとくに有名で・・・ よく手入れされた花壇が美しいレマン湖沿いの遊歩道や葡萄畑の間を縫うようにつくられた小道での散策や、船でレマン湖クルーズなどもおすすめ」などの解説がありました。
 事前に地図で確認していた大きな駐車場界隈にカラフルなパイプを活かした大きな建物があり、賑やかな音楽も・・・。帰国後に知ったことですが、20年ぶり開催の<ワイン生産者の祭りFête des Vignerons>で、「その準備は並大抵のことではない。100万人の来場者が見込まれるヴヴェイの華やかな祭典は、ブラジル・リオのカーニバルに匹敵する規模で」とありました。さらに「座席数2万席の野外アリーナが陣取る。まるで天から舞い降りてきた巨大な宇宙船だ。赤色、黄色、緑色、茶色で彩られたアリーナは、一際目を引く施設だ。100年に4回しか開かれない大祭によって、この小さい町は大きく様変わりする」との記述も。
 稀有な大祭主会場の特設アリーナを、船上で至近から眺めていたとは露知らず、われわれ3人は船上でのんびり、ゆったりと過ごした次第でした。

クルーズ船から優雅に眺めるラヴォー地区:お城!?はワイン農家・レストラン(左)。下船候補として検討した小さな桟橋界隈も魅力的(中)。葡萄畑と共に、行き交う列車を眺め、撮るのも楽しい(右)

 なお、ヴヴェイでの下船は、当初から除外しました。その理由は、町中を歩く距離が長く、葡萄畑地帯の散策が、限られた時間では短くなるためでした。大祭開催期間中と知っていても下船しません。

 視聴覚的に賑やかだったヴヴェイを発つと、世界文化遺産の葡萄畑地帯を至近で眺める航路になりました。ヴヴェイで響いていた大音量も聴こえなくなり、静かな環境での航行です。
 ダイヤ上14分で、リヴァズRivazに到着。湖畔の城館にも見えるワイナリーに心惹かれ、この桟橋で下船することも検討しました。が、丘陵地を歩いて上った駅の周辺にワイナリーが無く、保留しました。

 鉄路はIRが行き交う湖畔の幹線と、丘陵地の集落を結ぶ近郊線主体の二つが、ローザンヌからヴヴェイの間、ほぼ並走しているのです。船上から、長い編成のIR、小編成の近郊電車S-Bahnが走る風景も眺めつつ、撮れたことも嬉しかった小生でした。
 リヴァズを発ち、レマン湖畔をさらに西へ航行し、15分で目的地のキュリーCully (lac)に到着です。それと分かる集落が近接し、間もなく緩速になる頃、レマン湖クルーズに満足感を抱くと共に、達成できている現実に感謝の念を抱きました。

目的のCully が近づきクルーズ船は減速(左)。キュリーの村を眺めつつ(中)、同桟橋で下船(右)し、歩きます。

 キュリーの桟橋で、計画通りの下船をした後、世界遺産の葡萄畑地帯を歩き、高台の駅至近にあるワイナリーに入って、テラス席で展望し、ワインを飲みます。(次号に続きます。)

 
 本稿に関連するレマン湖クルーズの航路図等を添付しました。参考になれば幸いです

 2021年7月も全く同じダイヤ・船便でのレマン湖クルーズが可能でした。コロナ渦が過ぎて、自由旅行が可能になることを祈念しつつの今です。

 以下は、ホームページ版のみの追加資料です。

レマン湖などと、湖山池~浦富海岸の地図を同縮尺で示しました。

モントルー駅からクラレンスの桟橋までの散策ルート

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