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〔続 スイス悠々〕

(10)バスでスステン峠を越え、悪魔の橋へ

朝日を浴びたアイガー山頂(左)。自室バルコニーで経時的に撮影(左中)。7:19に発車して間もなくに車窓から眺めるアイガー[E]、ユングフラウ[J]とシルバーホルン[S](右中)。インターラーケン至近でもJ・Sを遠望(右)

 前日にグロッセ・シャイデックからフィルストまで歩き、さらにバッハアルプ湖までの往路を初体験ルートで探訪した翌日、2018年7月16日(月)も単独行の全日でした。幸い、快晴に恵まれ、山に上がり散策しても良かったのですが、同伴するヒロさんとの行程に残し、気になっていたコースの“乗り鉄”的行動としました。
 アイガーを臨むホテルの自室バルコニーで、夜明け前からのアイガーと村を経時的に撮り、“赤富士”ならぬ、頂上が朝日に染まる“赤アイガー”を眺めつつ撮影し、さらに、中腹まで陽光が射した時点で、地上階にある朝食会場に降りました。オーナーの奥様などとも再会の挨拶を交わし、満腹にした後に出発です。ホテルから、普通に歩いて5分あれば、乗車できる距離にあり、ありがたいことです。
 朝日に輝く車窓を楽しみ、インターラーケン東駅で、LUZERN-INTAERLAKEN EXPRESSに乗車。車窓から、ブリエンツ湖、U字谷の断崖、数条の滝、アーレ川や陽光に輝く高山の遠望を楽しみ、谷底に位置するMeiringenマイリンゲン595mで下車。駅前のバス駅に急ぎ足で歩き、バスの番号(162)と行き先(Steingletscher)を確認し、トラベルパスを運転士に見せて乗車。幸い、最前列席に恵まれました。

モニター類が充実している運転席(左上)。街中を過ぎて、アーレ川を通過(左下)。バス駅に停車中に西側を撮影。家屋の花も綺麗(左中上)。走行中にU字谷を撮影(左中下)。子ども連れの一行が下車(右中)。運転手も降りていたので、小生も降りてバスを撮影(右上)。自身、全く知らないTriftbahnなる駅の乗り場だった(右下)

 バスは発車すると、シャーロック・ホームズの全身座像横を通過し、間もなく街中を過ぎるとアーレ川を通過。路肩に停車スペースが確保されているバス駅に停車中に、U字谷の断崖、花で飾られた家屋のコラボが美しく、撮りました。西側方向で、順光ゆえ、バスのガラス窓が支障にならず・・・。スイスならではのU字谷の景観を楽しみつつ、バスはInnertkirchenインナートキルヒェンの三差路を左折し、Gadmenガトメン谷を上るスステン峠方面へ。間もなくのバス駅で、大勢が下車しました。バス収納庫の荷物取り出しのため、運転手が下車したので、小生も下車し、バスの先頭を記念撮影。マイリンゲン出発時は、自座席確保のため(男の子に譲らず)、サッサと乗車したので、撮る機会を逸していました。幸い、子どもの引率者が、最前席は危険だから避けるようにと、子どもを諭してくれたのは幸いでした。カメラを持ち、子ども行動をしているガイジン高齢者(小生)への配慮もあったことと思えましたが・・・。
 バスの自席に戻り、車窓から大勢が下車した訳が分かりました。Triftbahnなるゴンドラの基地だったのです。ガイドブックに掲載されていない山岳交通は、時々、車窓や船から目にします。これらを調べて体験するようになれば、自称“スイス通”が名乗れるのかも知れませんが、無理難題です。

自転車走行を邪魔しないように、カーブではバスが減速し、直線道路になるのを待っていた(左)。上る自転車は稀ではなかった(左中)。車窓からの遠望(中)。道路工事現場での停車中に谷底が見え(右中)、望遠撮影(右)

 大勢が下車した後も、ハイキング服装のカップルが下車する光景を目にし、界隈に良い所があるのだろうと思いつつの車窓でした。道路の勾配が大きくなるに連れて、見通しの悪いカーブが続きます。
 バスの運転手さんは、自転車で上る様子を慈しむがごとくに、実際、驚きの念を抱くほどに、減速し、先が見通せる直線が得られるまで、辛抱強く運転していた(ように思えた)次第でした。
 頂界隈に雪が残る高い山並みと、U字谷の断崖を流れ落ちる滝などを眺めつつの車窓です。先方に工事現場らしきが見え、バスは停車。車窓から覗き込むと、珍しく谷底を流れる渓流が見えたので、望遠撮影を含めて撮りました。間もなく、バスは発車し、青信号が見え、反対車線を通行しました。

終点で下車:至近地でシュタイン氷河から流れ出る渓流(左)。3年ぶりに見上げる観光滝は順光(左中)。乗り換えるバスが到着した(右中上)。谷底から見上げた滝を成す岩盤に掘られたトンネルをバスが通過します(右)

 終点はSteingletscherシュタイングレッチャー(シュタイン氷河)で、下車しました。乗換時間16分が、観光かつトイレ休憩時間となります。2015年にバスで初体験した際は逆コースで、午後でした。当時はAndermattアンデルマットからマイリンゲンまで直通でしたが、今回はバス乗換でした。
 アンデルマット界隈に住居のある運転手は、当地まで運転し、出発地に戻ることになります。マイリンゲン界隈の運転手然りで、長距離であり、遠方地で宿泊が余儀なくされることからすれば合理的と思えました。私事、例は全く異なりますが、湖山時代のバイトで日交バスの車掌をしていた際、遠方地への最終便は、弁当持参で、宿泊所で泊まり、翌日の朝便で鳥取駅に戻っていたのです。このこともあり、感慨をいだきながらの乗換でした。
 今回は午前中であり、観光ポスターでも見た滝Wyssebachfallが綺麗に見え、撮れました。

車窓撮影:乗客は小生のみであり、運転手は緩速で峠界隈を通過(左)。スステン峠をどんどん下ります(右)

 予定通りにアンデルマットから来たバス到着し、乗り換えましたが、何と、乗客は小生一人のみで、勿論、最前列に座りました。ポストバスで峠を巡るコースは、トップシーズンにおいては予約が望ましいとのアナウンスがスイス連邦鉄道のHPに記載されています。が、まさか、乗客が小生一人とは・・・。初体験になりました。運転手さんは「何処まで行くんだぃ?」、小生「アンデルマット。氷河があるあの山は? スステンホルンは?」など、しどろもどろ会話。バスは峠界隈で減速し、運転手さんが何やら解説してくれましたが、小生のヒアリング能力では理解できず仕舞いで、車窓に見入っていました。勿論、正面と、主に谷側になる側方の車窓に魅せられ、撮り続けました。
 運転士さんは、小生の会話能力が全く劣ると認識し、解説を諦めて、横見することもなく、運転に集中し始めました。

ヴァッセンの集落が見えてきました。ランドマークの教会を見降ろし(左)、横を通過。通過して来た道路を見上げ(左中上)、街の交差点を右折(左中下)。高速道路が渋滞しており、尋ねると「バカンス渋滞」だと(右中)。世界一のトンネルが開通し、観光路線になった旧幹線(右上)やロイス川を眺めて、間もなく終点(右下)

 Sustenpassスステン峠2260mを越えた後の景観は雄大です。とくに、東へと下る際に視界が開け、通過して来た道路、これから走る道路などが、視界にしっかりと入ります。高山が見えなくなると、やがて谷が見え、谷底の集落Wassenヴァッセン930mが目に入ります。目立つのは教会で、見おろす景観のランドマークとなります。バスの車窓からもですが、鉄道を観光列車で走る際にも、車窓からの教会の高さ、眺める方向が大きく変化します。
 とくに、鉄道はループトンネルを通過することで、突然、異なる高さ、形状で同じ教会を目にすることになります。バスの車窓からは、ループトンネルの走行はないので、驚くほどに急変化することはありませんが、谷に下ると、側方方向に近接して眺めることになります。
 ロータリーの三差路で一時停止。行先の看板には右方向にLugano、AiroloとGotthardpass、Göschenenが、左方向へはLuzern、Zürichなどが示されています。幸い、地理的な位置、交通面などが各々分かるようになりました。乗車しているバス162はGöschenenゲッシェネン1111m駅に立ち寄った後、アンデルマットが終点です。
 高速自動車専用道が見えてきました。南向き路線が混んでいます。運転手に聞くと「バケーションでのルガーノなどへ向ける渋滞」と教えてくれました。毎年の恒例なのかもしれません。
 バスはゲッシェネンの鉄道駅に立ち寄りました。小生が降りる意思表示をすると、怪訝な顔をして、「アンデルマットに行くのでは?」、小生「Regio、Devil Bridge」と発し、下車しました。

下車したバスを見送り(左)小生は列車で一駅の移動。ロイス川の渓谷・“悪魔の橋”(中)。同断崖(右)

 バス162は10:49にゲッシェネンを発ち、小生は列車内から見送り、撮影しました。
 列車は駅舎の外側(僻地)11番ホーム発で、電気機関車が3両の客車を、全線ラックレイル路線をアンデルマットまで一駅、高低差336mを12分で押し上げます。2015年に初体験した際は、逆方向でしたが、余りにも素晴らしい車窓に感嘆しました。本会報に「スイス悠々(5)ポストバスで絶景峠を巡る」の標題で掲載(No.423.2016年5月号, p.49-54)していただきました。
 今回は上りです。Reussロイス川のSchöllenen Gorge シェレネン渓谷の断崖と、悪魔の橋界隈の難所を思い知る光景が撮れました。2回目であり、悪魔の橋がある谷の断崖・稜線も記念に撮れました。

 下記はバス162のスステン峠~ヴァッセン~ゲッシェネン~悪魔の橋~アンデルマット界隈の地図です。​

 

追記)Triftbahnを調べると牧草地を意味するtriftで、バス停に隣接した駅1022mから山駅(Bergstation Trift)1390mまで渓谷沿いに南方向に上がります。ここを起点としたトレイルを3km弱、登り380m、下り40m歩いてTrift Bridgeに到着すると分かりました。
 そして、Trift Bridgeを検索すると、「あぁ見たことがあるような・・・」感覚を抱いた次第でした。
 スイス政府観光局の紹介文を引用します。「It is 100 meters high and 170 meters long, and is poised above the region of the Trift Glacier」
 参照:下記写真
www.myswitzerland.com > www.myswitzerland.com/en/are-you-up-to-it.html 

 Trift氷河と氷河湖、高さ170m、長さ100mで大揺れが保証できる吊り橋・・・。仮に訪れるとしても、安全のために、緻密な情報収集が欠かせません。Mapcarta(https://mapcarta.com/)でも調べてみました。ゴンドラで移動する渓谷は、極めて急峻かつ狭い峡谷です。車窓の景色に期待がたかまります。

 

 鳥取県東部医師会報では紙面の都合で割愛したホームページ版限定のオマケ組写真です。

​ 2015年、2016年に訪れた際には気づかなかったので、おそらく新設されたのでしょうが、視界の良い場所に、トレイルかわずかに北側の傾斜面に設置されていた長椅子・景観のご紹介(自身の備忘録)です。

 wix版[スイス悠々]のサイトが作成し得ている事実にも感謝しつつ・・・

[2019/2/9(土) up]

※ 本稿は鳥取県東部医師会報 随筆欄に掲載・連載(レイアウトは異なります)

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