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〔続 スイス悠々 秋色編〕(5)メンリッヘン界隈 

ラウターブルンネンから登山電車でヴェンゲンに上がり、ロープウェイでメンリッヘンに上がるのが定番

 秋にスイスを巡ったのは、2017年10月第1週。が、出国前にSBBことスイス連邦鉄道のHPで検索した際に、期待したツェルマットを基地としたマッターホルンを眺めながらブラウヘルトに上がる小型ゴンドラが、ヒットせず仕舞いでした。夏季シーズンを終え、運行を休止していたとの認識です。
 よって、メンリッヘンに上がりアイガーなどを眺めながら歩く日を、滞在中もっとも天候に恵まれる日に設定しました。スイストラベルパスの利点は、出国前の予定を大幅に、或いは、当日に現地でアレンジできることにあります。再三再四の変更・調整が常態ですが、この日もそうでした。
 翻って、非番日に鳥取に居て、天候に恵まれる日、夫婦で歩くことがあります。行き先は樗谿公園から太閤ヶ平、出会いの森の尾根道など限定的で、各々お気に入りのコースです。
 スイスに居て、自身としては外せないのが、メンリッヘン山頂に上がること。加えて、適宜アレンジしている実績で、計6回上がった中で、同一のコースはありません。今後も、自身にとっての聖地的なメンリッヘン山頂には、再々上がることでしょう。
 初体験のメンリッヘン秋色探訪でしたが、案の定、夏季に高山植物が咲き誇る山は枯草の黄色調でした。やはり、「初夏が良いなぁ」の感慨を抱きながらの散策でした。
 メンリッヘン山頂へと歩き始めて間もなく、パラグライダーを操る男性に出会いました。風を見ながら、タイミングを取り、やっと飛び出した・・・が、風が複雑なのか、あっさりと崩れてしまいました。

メンリッヘンの稜線で見かけたパラグライダーの男性は飛び上がれず残念(左)。秋色の中、ゴンドラ駅から約100m登ると山頂(中下)。2015年夏季に整備されたRoyal Walkの山頂は王冠の展望台(中上)望遠撮影。。全周の景観を堪能するメンリッヘン山頂で眺めるアイガー(E)、メンヒ(M)、ユングフラウ(J)の三山(右)

 パラグライダーは、スイス各地で目にします。日本海からの風が吹き上がる霊石山が名所になりましたが、インターラーケン界隈も好ましい風が吹くようで、再々、多くを目にします。そして、着陸地点が街のほぼ中心にあるヘーエマッテ公園で、私事、2005年6月2日にユングフラウヨッホからツアーで降りて来た際に見かけたのが最初でした。2500m界隈のトレイルを歩いていて、米粒大ほどのパラグライダーを見上げることも稀ではありません。山岳地帯の整備された道で自転車を漕いでいる様と合わせ、羨ましい感覚を抱きます。が、残念ながら、各々小生の齢では実体験ができない人生です。

メンリッヘン山頂からの望遠撮影:ユングフラウ山頂(J)4158m (左)。右手前に優美なシルバーホルン(右)

 空気が澄んで心地良い日本の秋晴れ・・・。初体験スイスの秋、メンリッヘンでも澄んだ透明感のある空気で、ベルナーオーバーラントの山々はくっきり鮮やかでした。つい、撮影を繰り返してしまいます。夏季シーズンは、足元の高山植物にも目を留め、撮り続けていますが、初秋は雄大な遠望が主体です。
 クライネシャイデックに降りて行くトレイルは、山々を眺めながらの雄大な環境で、妻曰く「スイスだけは、映像・写真では分らない。現地で体験をしなきゃネ」に共感します。それもスイストラベルパスを活用することで、各地の天気予報を確認しながらの催行です。かつて、智頭病院の医局仲間だった彼女が2005年体験時の小生の写真を見て、「ツアーで山に上がったが、雨雲に覆われて見えなかった。晴れたらこんな景色を体験できる・・・」と感慨深く話していたことを思い出します。
 メンリッヘン山頂に上がる過程、そして山頂からクライネシャイデックに降りる際も、時間は全く気にせずの散策でした。昼になり、汗ばむほどの好天に恵まれ、子ども連れの家族に追い越されることもあるなどのゆっくりとした歩みでした。この環境にわが心身を沁み込ませるがごとく・・・。
 アナタも、是非、スイストラベルパスを活用し、時間に囚われない行程の設計を!

クライネシャイデックに降りるトレイル:“お天気山”(W)、シュレックホルン(S)4078m(左)。振り返りメンリッヘン山頂を撮影(左中)。難易度1評価のトレイルで、子ども連れも多い(右中)。上着を脱ぐ彼(右)

 南北に伸びるメンリッヘンの稜線へは、グリンデルワルトに宿泊する際は2ルートあります。
 電車ないし宿泊すれば無料で乗れる村営バスの利用か、歩いて村の谷底に位置するグルンド(Grindelwald Grund)に降りて、小型ゴンドラに乗り、30分かけて上がるコース(紫)が一般的。
 ツアーの場合は、①グリンデルワルト村に宿泊の際は電車(WAB)に乗車し、②インターラーケンなどに宿泊する際はツアーバスで移動して、グルンドからの小型ゴンドラGondola liftを利用して稜線駅Männlichen GGMへ上がるコースです。とは言え、メンリッヘンの稜線からクライネシャイデックへ降りて行くハイキングコースが組み込まれているツアーの場合であり、大半はWABに乗車したままクライネシャイデックに上がります。

 もう一つは、電車(BOB)でラウターブルンネンに行き、WABに乗り換えて、教科書でも著名なU字谷の急坂を、ターンを繰り返しながらヴェンゲン村に上がり、WAB駅至近のロープェイ駅で大型のゴンドラCablewayに乗り、稜線駅Männlichen LWMに上がるコース(青)があります。
 小生のお勧めは後者(青)です。その理由は二つあり、トラベルパスがヴェンゲンまで有効で、追加料金なしで乗れる点、そして、何よりも車窓からの景観がダイナミックに変化する点です。
 と書きましたが、グリンデルワルト・グルントから小型ゴンドラでメンリッヘンに上がるコース(紫)は、実は小生は未体験です。つまり、シミュレーションでの記述でした。
 既述した通り、滞在期間中もっとも天気に恵まれる日を選んで臨んだのですが、それにしても乾いた快晴の空、空気が極めて澄んでおり、嬉しい限りでした。クライネシャイデックに降りて行く時間帯は午後でしたが、7月下旬と異なり、雲が湧くこともなく、それ以前に水蒸気が上がり、盛夏特有の空気の透明感が損なわれることもなく、堪能しました。
 エ?!ならば、初秋に再訪する?! 答は否です。初夏がベスト! 日本でも入道雲が沸き上がる盛夏の前、高山植物が咲き誇っている初夏の天候が最上! かつまた、夏季休暇前なので、観光客も多くないので、乗り物等が混雑することもない。勿論、夏シーズンは始まっているので、利便性は良い!
 という訳で、自身の残り人生、可能な限り、初夏7月第一週の出国をと心しているのですが・・・。

雄大な景観を眺めつつ緩やかな下り散策路を進むとクライネシャイデックが見えて来た(左上)。休むことなく歩き続け、初体験となるファルボーデン湖をめざします。途中、振り返ってクライネシャイデック駅界隈を撮影(左下)。アイガー北壁をやや西側から仰ぎ見つつの散策(左中)。湖畔に到着すると、アイガー北壁を間近に眺め、湖面の影も(右中)。湖畔を周り、湖畔東側から眺めるユングフラウは逆光(右)

 ファルボーデン湖畔でゆっくりした時間帯は、午後の遅い時間帯で、人はまばらで、ツアー客は皆無。よって、静かで上質な環境に浸ることができました。
 クライネシャイデックからファルボーデン湖畔までは、ほぼJB (Jungfraubahn)沿いの散策路で
行き来する電車を眺め、撮りつつの歩きでした。かつ、少し距離がありますが、WAB (Wengernalpbahn) の電車も秋色とのコラボで撮るなど、呑気な二人でした。
 復路は、クライネシャイデック駅でトラベルパスを提示し、ヴェンゲンまでを半額で購入。途中停車駅のヴェンゲルナルプまでは、過ぎ去るアイガー北壁を眺め、南正面方向にメンヒ、その右(西)側にユングフラウとシルバーホルンを愛でつつの車窓は相変わらず嬉しい限りです。

ヴェンゲナルプでの登り車両との行き違い停車は定番:この間もユングフラウなどの雄大な景観を眺めつつで、飽きない (左)。秋色の中を下るWAB車両(中)。夕方は順光に照らされて美しい限り!(右)

 快晴に恵まれた2005年6月2日朝、連泊したホテル・インターラーケンからツアーバスに乗り、ラウターブルンネンで下車し、WABでクライネシャイデックに上った初体験の際は、澄んだ快晴でしたが、ユングフラウ、シルバーホルンは逆光。手持ちのデジカメで手前の景色を撮ると、陽光が強く、山々はハレーション、山にピントを合わせると手前の景色は暗くなり、困惑至極でした。
 当時、自身が初めて購入したデジカメは1280×960ピクセルに留まり、それでも当時は100画素を超えることが“売り”になっていたことを思い出します。この画素数でも、気に入りの写真を四つ切サイズにプリントし、額に入れ、部屋に掲げていたのです。隔世の感を抱きます。
 ヴェンゲンからメンリッヘン山頂へと上がり、アレンジを加える企画、或いは、新たに誘うアナタを伴う場合は勿論、今後も大切にしたい秀逸な全日コースです。いかがですか・・・?

※ 本稿は鳥取県東部医師会報 随筆欄に掲載・連載(レイアウトは異なります)

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