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〔続 スイス悠々〕

(15)スイスのライン川クルーズ

シュテックボルンの桟橋にて(左)。ドイツ側からクルーズ船が到着(中)。出航:;船尾に立ちます(右)

 2017年10月初旬、初めてライン滝を訪れたが、帰国後に、現地で撮った写真を見た妻が「行きたい!」との意思表示をした。2019年7月下旬、5年連続でベルナーオーバーラント地方に連泊し、スイストラベルパスを活用することを決定していたが、同地からすれば“僻地”にライン滝がある。つまり、ライン滝はチューリヒの北方、ドイツとの国境地帯に位置するゆえに。ハテ、どうする・・・。
 パスポート使用が人生で初めてと言う同年女性と妻の二人を伴うとなれば往路の夜行便を避け、価格は高くなるが、鳥取空港発着、羽田国際線航空路を活用することにした。当初計画では、チューリヒ空港到着後、鉄道で連泊地に移動する計画だった。が、チューリヒ旧市街での前泊を思いついた。これにより、時間的なゆとりが生じた。とは言え、彼女らの都合が優先であり、数種の企画提案をし、チョイスしてもらったのが、チューリヒ中央駅からボーデン湖畔のRomanshornロマンスホルンへ特急で移動し、Schaffhausenシャフハウゼン行の近郊電車に乗り換え、ボーデン湖畔を西へ走り、さらにライン川沿いの走行で、Steckbornシュテックボルンで下車。近くの桟橋まで湖畔沿いに散策し、クルーズ船でライン滝の基点都市であるシャフハウゼンまでの2時間余を楽しむコースでした。(末尾参照:概要地図)

スイスの対岸・ドイツWangenの桟橋の上に何と!望遠撮影(左)。観光船が近づいたら、彼女らはよじ登り、ポールの上に立った。Q娘に注目(左中)。観光船が出航したら、Q娘が率先し、皆が次々と飛び込んでいった(右中)。ドイツ側のヨットの群(右上)。航跡を横切るモーターボートはレジャー用のボートを曳いていた(右下)

 近づくクルーズ船の船高が低い印象を抱いたが、正しかったことがクルーズ後半で明らかになった。
 乗船後、紫外線を気にせず、船尾甲板の順光となり易い右舷、ドイツ側の“立ち見席”を確保した。同行の二人は紫外線を避け、無事船の庇の下の相向いの長椅子席にガイジンさんに交じって座した。
 シュテックボルンを出港すると、ほぼ、ドイツ、スイスの桟橋をジグザクに進んで行く。二つめの桟橋は、ドイツのWangenヴァンゲンだが、近づくと、木製の桟橋の上に、日本なら海水浴場姿の若い娘たちが・・・。そして、見ていると、クルーズ船が近づくのに合わせて、船から桟橋を保護するポールの上によじ登り、ポールの上に立ち上がった。そして、船が出航し、船尾が桟橋から離れたと感じた時点で、一斉に飛び込んで行った。行動に驚きつつも、国を問わず、無邪気な若者行動に嬉しくなった。
 想像を超えたリゾート地の雰囲気に驚嘆しつつ、河畔を撮り続けた。係留中のヨットの群、出艇しているヨットも撮り、モーターボートが大きめのゴムボートを引いて航跡部分を横切る様などナド・・・。
 やがて、まとまった街が見えて来た。Stein am Rhein シュタイン・アム・ラインは、“ライン川に接する石”と訳せますが、地名の由来、石の名産地・名産地であったか否かは調べ得ていません。

スイスのライン川クルーズの名所:シュタイン・アム・ラインの街と、丘の上には城が(左)。同桟橋には多くの人の列(中)。同桟橋を出港後に再び見えた城はホーヘンクリンゲン城(右)

 河畔の美しい街の景観に目を留めつつ、丘の上にお城と分る建物も見て、コラボでの撮影をしました。桟橋が見え始めると共に、多くの人が列を成しており、多くの客の下船後に、皆が乗船。船上が一層混んで来ました。小生は座る気がないので、“立見席”のままです。彼女らはより良い条件の“日陰席”を確保していました。
 同桟橋を出航後、少し離れて振り返ると、再び、城が姿を見せました。調べたらBurg Hohenklingen ホーヘンクリンゲン城で、戦乱等を免れ、13世紀初めからの建物が残存し、現在はレストランとあります。
 愛用のkomootで検索すると、桟橋から歩いて上がると所要30分余、高低差約160mで、城界隈からライン川、田園地帯の景観を堪能する機会に恵まれるとの確信を抱きましたが、体験し得る機会は?
 河畔の光景は多く撮りましたが、大半は割愛し、川面が美しかった写真を組写真にしました。今、眺めても心が和む小生です。

静かな川面・樹木の緑が美しい(左)。水浴を楽しむ家族?(左中)。川中の柱(右中下)。優雅な休日(右上下)

 ライン川の川面と河畔の樹木の緑のコラボがとても美しい、いや、美し過ぎる・・・。この日は、7月20日()で、家族連れか、川辺での多種多様なレジャーを楽しむ様子を含め、羨ましく思えました。
 観光船が航行するライン川の中央は、航路を示す杭の様子から、早い流れが感じられます。一方、川辺は実に穏やかな感じを受けます。この違いが、今でも小生には謎です。川縁はラインの流れが全く気にならないようで、のんびりとした光景を目にし、美しい川面・河畔に魅せられつつ、撮り続けました。

木製屋根の古橋があり、船の屋根が下がり、小生も着席を指示された (左・中)。橋が国境でスイス側 (右)

 船尾のデッキに発ち続け、前方に、ライン川に架かる古風な橋が見え、教会の塔などもあり、新たな風景に期待感を抱きつつ、呑気にしていたら、甲板員の彼が近づき、座れと指示してきた。「エ?何故?」との感覚を抱きつつ、指示に従いました。間もなく、客席の屋根が低くなった。隅田川の遊覧船で体験するのと同様、支柱が傾き、気づくと、操舵室の屋根も、構造は不明のままだが、低くなっていた!
 国境を成す歴史的な歩行者用の木橋の名称は、南のスイス・北側のドイツの地名によるRheinbrücke Diessenhofen-Gailingen で、歴史は12世紀に遡り、通行税を活かし、街(村)の収入、橋の修理代としていたようです。さらに、全長86.7m、幅6.1m、現在の橋は1816年と自学(ウィキペディア)。
 橋を西・下流側に抜けると、船は180度方向転換し、船首を上流に向けて、ディーゼンホーフェンの桟橋へ。目前に教会の塔を見上げ、桟橋界隈はカフェレストランがあり、憩う人たちが談笑。下船したい衝動に駆られましたが、願い叶わずで、乗船し続けます。

船首に移動。自転車や車椅子の方(左)。この界隈は両岸がスイス(中)。丘の上にムノート城の塔(右)

 乗船してから1時間半が経過した時点で船首に移動しました。観光船が進む船首の景色も撮りましたが、午後に西方向への航行ゆえ逆光で、本稿では割愛し、順光になる北側の河畔の輝く色彩に魅せられ撮り続けた写真を組写真としました。この界隈、丘陵地になっているライン川の北側は陽光を浴び易いので、ワイン畑が広がっていました。日本では体験できない光景に魅せられ続けていた小生です。
 やがて、右船腹前方に、丘の上にあるMunot ムノート城の塔を眺め、「Schaffhausenシャフハウゼンに着く。下船だよ~」と同伴の彼女に声をかけようとしたら、既に、左船腹の下船口に立っていました。船首に移動する際に、下船時の指示をしていたことが奏功。混雑を避けて、早めに下船する理由は、初めての訪問地で、電車駅までの移動(時間的制約)があったからです。
 観光船は、ここでも旋回し、船首を上流に向けて、桟橋に接岸。シャフハウゼンに上陸しました。
 
スイス政府観光局の紹介文には「標高403m ドイツ、オーストリアの国境ともなっているボーデン湖からフランス、ドイツ国境のバーゼルまで続くライン川沿いにあり、水運交易で栄えた街。高台にあるムノート城、ザンクト・ヨハン教会や、美しい壁画が描かれた騎士の家、市庁舎など、中世の建物が並ぶ旧市街など小さな古都の魅力にあふれ、約3万5千人の州都でもあります。周囲にはぶどう畑が広がり、高品質なワイン産地としても有名。ゲーテも愛したヨーロッパ最大の水量を誇るライン滝やライン川下りの船旅などのエクスカーションも人気」とあります。
 本稿を執筆する際に、高品質なワイン産地としても有名と知りました。現地で飲みたい衝動が萌芽。

河畔のモニュメントは?(左)。桟橋に到着(中)。旧市街に親しみ、電車で移動しライン滝界隈を散策(右)

 クルーズはシャフハウゼンが下流域の起点(上流域はボーデン湖畔)です。その理由は、航行が不能な欧州第一の水量を誇るライン滝が近いからです。よって、当地は物流の基点として栄えてきた長い歴史があります。
 桟橋を降りると、正面左手・西方向が旧市街。カフェやお店で賑わう路が見えます。初探訪の当地、近郊電車で、ライン滝に直結した駅へ移動するため、教会に入るとか、カフェ等で休憩する時間はありませんでした。屋台のアイスクリームを舐める程度に留め、無事、駅に到着。
 なお、ボーデン湖を含めたクルーズは4社が運航していますが、体験したスイスのライン川クルーズは
UNTERSEE UND RHEIN 社が運航しています。

 予測以上に秀逸だったスイスのライン川クルーズは、あくまでも導入編であり、この日の主目的は、妻が願ったライン滝でゆっくりすることでした。
 かつ、この日の最後に、特急で移動し、ベルナーオーバーラント地方のSpiezシュピーツまでの移動もあります。これらを逆算し、かつ、ホテル出発時刻を決めての催行で、シャフハウゼン14:45着の観光船を選択。9時半前にホテルを発ち、チューヒリ中央駅10:05発の特急に乗り、ロマンスホルンで6分の乗換、同 11:18発近郊電車はシャフハウゼン行。近郊電車で観光船を追いかけ、シュテックボルン12:01着で、桟橋まで12分とありますが、河畔に出て、ゆっくりと上質な環境に親しみました。スイス連邦鉄道のダイヤは観光船と連動し、毎年、ほぼ同じです。
 なお、ライン滝の概要は、既に、本シリーズ[
続 スイス悠々(7)ニーダーホルン~ライン滝](2019年9月号 No.443)に書いているので省略します。但し、初探訪は初秋でしたが、今回は7月下旬であり、雪解け水による水量が多く、勿論、樹木の色も異なり、迫力などを堪能しました。えぇ、この日の行程の動機となった彼女も大満足でした。

 日本のツアーでもミュンヘンへのバス移動の際、ライン滝に立ち寄る企画もありますが、滞在が30分程度にとどまり、ゆっくりと環境に浸りつつ、散策することは出来ません。自由旅行の醍醐味です。
 ライン滝を後に、近郊電車でチューリヒに戻り、ホテルで預けていたスーツケースを受け取り、中央駅へ。列車食堂を連結、ベルンで乗換なしの直通特急の情報を収集済で、旧市街のホテル往復、荷物を持っての移動等、時間を計算しての行動でした。即ち、夕食は特急列車のレストランカーです。

 チューリヒ中央駅到着後は、ホームの食堂車両停車界隈で待機。乗車後、食堂車の専用置場にスーツケース3個を置き、彼女らの好みで郷土料理などを注文し、約1時間半の飲食を楽しみました。小生は定番的に白ビールで乾杯。
 乗車した特急は(この日の朝、往路と同じ)IC8で、チューリヒ中央駅に 18:55に入線し、19:02発。高速専用線も走り、ノンストップで 19:58 ベルン着、同 20:06発、20:34 シュピーツ着でした。
 以上、スイス連邦鉄道 Online timetable(http://fahrplan.sbb.ch/)をフル活用しました。なお、この日の全行程はスイストラベルパスの適用区間であり、追加料金はありませんでした。

 稀有かつ極上のスイスのライン川紀行はオススメです。アナタも是非どうぞ!

※ 本稿は鳥取県東部医師会報 随筆欄に掲載・連載(レイアウトは異なります)

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