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〔続 スイス悠々 秋色編〕

(2)シーニゲプラッテ鉄道 

シーニゲプラッテ鉄道の起点はヴィルダースヴィル (左下)。出発して間もない光景(左上)。のどか・・・(中上)。最大勾配25‰ (中下左)、狭軌車両の雰囲気(中下右)。好天の“秋色”に心が和んだ。秋に来て良かった(右)

 スイスを自由に旅行したい夢の発端は、私事、シーニゲプラッテにあります。結婚30年記念、2005年5月下旬から6月初め、感染症の流行が落ち着く頃の、現地5泊6日の格安ツアーでした。ドイツで移動しつつの3泊、スイスはインターラーケンでの連泊で、全日自由の設定があったのです。私事、ツアー旅行では、自由時間が確保される企画を大切にしています。仮に、著名な観光地を訪れる際も、1・2時間のフリータイムを活用して、ツアーで企画されない場所・穴場などを訪れるのが常です。
 2005年6月1日(水)は、幸い好天に恵まれました。全日自由と言っても、移動に時間をかけるのは非効率であり、インターラーケンから至近地にあるシーニゲプラッテを訪れることにしたのです。
 朝食後にホテルから至近のケーブルカーでハーダークルムへ。三山を眺めた後、インターラーケン東駅からグリンデルワルト行の列車に乗り、隣のWilderswilヴルダースヴィルまで4分の乗車で下車。全線がラックレイルで狭軌の登山鉄道Schynige Platte Bahn(SPB; シーニゲプラッテ鉄道)に乗り換えて、山頂のシーニゲプラッテ駅まで登りました。スイスの鉄道は初体験であって、インターラーケン東駅での切符購入の段階からして、初々しい緊張感を味わったことを鮮明に思い出します。

 SPBの可愛い車両に乗ってしまえば、楽しい限りでした。2005年は、出発するまで30℃前後の快晴の日々が続いており、「訪れる頃には天気が下り坂・・・」を懸念したのですが、幸い杞憂でした。
 最終日の6月2日(木)は、ツアーバスで、教科書に出て来るラウターブルンネンのU字谷を走り、同名駅から登山鉄道WAB(Wengernalpbahn)で、楽しい車窓を堪能したことを思い出します。

嬉しく楽しい車窓:単線で下り列車との遭遇(左)。遠方はトゥーン湖・下はヴィルダースヴィル(右中)

 2回目のスイス体験は、スイストラベルパスを活かした2015年初夏でした。「スイス悠々」のシリーズタイトルで本会報に1年間・6回書かせていただいた通りです。SPBは、それまでパスの活用で半額でしたが、2017年は追加料金なしのパス適用区間になっていました。
 10月1日、Spiezシュピーツに到着後、7連泊する駅至近のホテルにスーツケースを預けて、直ちに出発!高山植物は期待できませんが、“秋色”に期待しました。
 午後は雲が沸き易く、ベルナーオーバーラント三山、即ち、アイガー、メンヒ、ユングフラウの全容を眺めることは無理かもと思いつつも、それでもSPBの起点駅からユングフラウの頂きとシルバーホルンが見えていたので、期待感を抱きつつの乗車でした。

嬉しく楽しい車窓:単線で下り列車との遭遇(左)。遠方はトゥーン湖・下はヴィルダースヴィル(右中)

 2回目のスイス体験は、スイストラベルパスを活かした2015年初夏でした。「スイス悠々」のシリーズタイトルで本会報に1年間・6回書かせていただいた通りです。SPBは、それまでパスの活用で半額でしたが、2017年は追加料金なしのパス適用区間になっていました。
 10月1日、Spiezシュピーツに到着後、7連泊する駅至近のホテルにスーツケースを預けて、直ちに出発!高山植物は期待できませんが、“秋色”に期待しました。
 午後は雲が沸き易く、ベルナーオーバーラント三山、即ち、アイガー、メンヒ、ユングフラウの全容を眺めることは無理かもと思いつつも、それでもSPBの起点駅からユングフラウの頂きとシルバーホルンが見えていたので、期待感を抱きつつの乗車でした。

下界に雲海が拡がり、高層雲が・・・(左)。ハイジの世界を登る(中)。三山が眺められる界隈にガスが・・・(右)

 車両の窓から顔を出すと、上方は快晴と評せられる青空が眺められ続けましたが、下界にガスが拡がり、側方には雲が・・・。仮に、ベルナーオーバーラント三山の頂界隈が晴れていても、シーニゲプラッテから眺める途中に雲・ガスがあれば、視界を遮り、眺めるには至りません。当然のことですが、しかし、淡い期待を抱きつつの車内・車窓でした。
 振り返れば、自身、中高時代から地理が好きで、鳥大受験では、当時、地理の選択が可能でした。国語、英語は苦手で、勉強もせず、得点は勘・運に任せる状況でした。幸い、数学、物理、化学は点が取れて、社会では世界史や日本史が非常に苦手でしたが、地理に救われました。はい、地理は勉強した感覚がないのですが、出雲高校時代に周囲が驚くほど、点数が取れていたのです。今、このことを書いたのは、土地勘記憶が良いことの確認で、SPB車内に居て、初体験の2005年の際を思い出して、三山が眺められる界隈に来て、しっかりとガスが視界を邪魔していることへの困惑があったからです。

残念ながら山頂駅はガスに包まれていた (左)。歩き始めたらガスが晴れた。駅を見降ろして撮影(左中)。
計画していた周回を諦め、至近の頂に登り、記念写真(右中)。ガスが攻め来る下りの途中足元を撮影(右)

 シーニゲプラッテ山頂駅が見えた頃には、すっかりガスに包まれてしまいました。それでも、ガスの晴れ間があり、せっかくの記念に至近の頂に登ることにしました。視界に入っていた2067mのGeissです。2000m界隈で、初体験の散策ルートは、ガスに覆われたら危険です。2005年に妻を伴った際は、快晴に恵まれ、頂上界隈の周回も可能でしたが、残雪に阻まれ、妻の意向で断念しました。
 ガスが拡がる気配を感じたので、一気に登りました。シーニゲプラッテ駅が1987mで、80mの登りでした。若干の息切れ感を覚えつつも、頂上にはガスがかかっておらず、幸い、記念写真も居合わせた男性に撮ってもらえました。しばし周囲を見渡し、「いつか天候に恵まれ、時間を確保して歩くぞ!」との思いを抱き、ガスが急速に拡がって来るのを確認し、そそくさと下りました。大半が土道で、周囲には、稀でしたが、時季外れの高山植物が咲いており、それらを接写し、記念に残せました。
 スイストラベルパスが適用になったことで、“秋色”体験をしましたが、本来なら夏季(雲が湧きにくい観点では初夏)の午前中が嬉しいのがシーニゲプラッテです。全山が高山植物に覆われる2000m程にありますが、さらに山頂駅の至近に「高山植物園(www.alpengarten.ch/)」があるためです。
 既述しましたが、2005年は好天が続いた影響で、開園前でしたが、高山植物が咲き乱れていました。懐かしく、嬉しく、その際に撮影しPCに保存していた写真をご紹介します。

 アイコン「Hiking」をクリックし、出発地(A)と目的地(B)を入力し、適当にドラッグして経由地を設定します。(A)・(B)も適当に移動し、自分の思う通りのコース設定が可能です。シーニゲプラッテの場合は、駅発で時計回りに周回し、駅至近の高山植物園を目的地に設定して概要を把握します。
 多少アレンジして図示しましたが、(A) がシーニゲプラッテ駅で、(B) が高山植物園です。Daube 2076m まで登り、以降は緩斜面です。せっかくですから、奇怪な岩山の Oberberghorn 2069m にも上がり、高山植物園をめざして、引き返しましょう。時計回りに3km弱、上り150m、下り130mの上り下りで、所要1時間11分とあります。が、ゆっくりと景色を眺めつつなので、2時間程度は確保します。
 さらに、高山植物園で時間を過ごし、レストランでの休息を含めると4時間程度は欲しいところです。
 各地の地図やハイキングルートは、outdooractive (
www.outdooractive.com)  のRoute Planner やGps-Tracks com (www.gps-tracks.com/) の [Maps on foot] で [Topo Switzerland] を選択するなどして、環境などの確認を強化しています。各々情報が詳細なので、“地図で遊べる”利点もあります。

 いつの日か、必ず、ベルナーオーバーラント三山などを眺めつつ、歩き回る機会に恵まれることを祈念し、今回は雲に包まれたシーニゲプラッテから降りました。

2005年6月1日にシーニゲプラッテで撮影した高山植物など写真集のご紹介。右上はユングフラウ

 自身、西欧旅行で最初にデジカメで撮影したのが2005年の際でした。1280×960ピクセルで、120万画素のレベルであり、近年愛用しているデジカメが1,000万画素近い3648×2736ピクセル(1枚4MB前後)であることからして隔世の感を抱きます。
 シーニゲプラッテ界隈の散策は、高低差が小さく、ほぼ360度の景観が楽しめるので、期待が大きい地です。ベルナーオーバーラント三山、即ち、3970mのアイガー、4107mのメンヒ、4158mのユングフラウが、東手前から西奥に並んでいることもあり、シーニゲプラッテからの光景は概ね同じ高さで、かつ均等に並んで見えます。“時計回りに歩くと、Panoramawegを歩きつつ、麓にはインターラーケンの街が拡がり、その向こうにはトゥーン湖の一部が見えている。勿論、三山も眺めつつ、頂上を回り込んだ南側の稜線からはコバルトブルーのブリエンツ湖を眺め降ろし・・・と言った景観が拡がり、足元には高山植物が群落を成している”はずです。
 2005年当時には、スイスのツアーで、ハイキングやトレッキングが売りになっている企画は見当たりませんでした。近年、それらが“売り”の企画をよく目にしますが、かなりの頻度でシーニゲプラッテが入っています。山頂駅からの高低差が小さく、難コースがなく、2時間もあれば周回できることや、その体力がない場合でも、高山植物園やホテルレストランで景観を眺めつつくつろげる利点があります。
 自身、スイスを歩く際に活用しているお勧めのサイトが

あります。

 “The best route planner for cycling and hiking”を謳う

komoot (www.komoot.com/) Routeplanner です。

下りのSPB車窓も楽しい限り (鳥取県東部医師会報では省略した組写真)

 下る車窓も楽しい限りの所要52分でした。そして、麓駅584mのヴィルダースヴィルに到着して見上げると、何と!パンタグラフの上に4158mのユングフラウとシルバーホルンの全容が見えていたのです。1987mのシーニゲプラッテに上がると雲が邪魔して臨めず、下界からは見えていた・・・。

下りも登る車両との行き来は楽しい。麓駅に降りたら、何と!ユングフラウが見えていた (右)

 実は、2018年7月にも相棒ヒロさんと(4年間で3回)スイスを訪れました。20日(金)朝、自身も初体験のスイスで唯一電化されていない山岳鉄道、つまり、蒸気機関車が押し上げるBrienzer Rothornを体験しましたが、午後にトラベルパスの適用区間であるシーニゲプラッテを再訪することにしました。ところが、乗車し、トラベルパスを見せたら、車掌の彼女が「駅でチケットを買え」と!
 駅窓口には観光客が列をなしていたこと、登っても、雲で三山が望めないであろうことから、急遽、中止して、バスで移動し、トゥーン湖のクルーズを楽しみ、事なきを得ました。
 帰国後確認すると、どうやらパスの適用区間は年により、変化すると知った次第でした。ご留意を!

※ 本稿は鳥取県東部医師会報 随筆欄に掲載・連載(レイアウトは異なります)

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